ナッパ
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DONEなっぱっぱさんとの鋭百合同誌の再録です。(2022/7月)お題になった頭文字はXです。
X『主演:花園百々人』
もらってきたポスターには白抜きの文字でそう書かれている。舞台に立っている百々人を後ろから映したポスターの彩度は低く、たったひとつのスポットライトを当てられた百々人の周りだけが異質なもののように浮かび上がっていた。
自分が大きく映っているポスターは無理のない範囲でもらってくる。ポスターがもらえたら、ふたりで暮らすこの家のリビングに飾る。それが鋭心と百々人の共同生活で自然と生まれた、いくつかの取り決めのうちのひとつだった。飾ったポスターの代わりに剥がしたポスターはくるくるとまるめて、ふたりの台本やトロフィーが置いてある共有部屋に収めていく。その習慣に従って貼られたポスターを眺めながら、百々人が困ったように苦笑した。
6834もらってきたポスターには白抜きの文字でそう書かれている。舞台に立っている百々人を後ろから映したポスターの彩度は低く、たったひとつのスポットライトを当てられた百々人の周りだけが異質なもののように浮かび上がっていた。
自分が大きく映っているポスターは無理のない範囲でもらってくる。ポスターがもらえたら、ふたりで暮らすこの家のリビングに飾る。それが鋭心と百々人の共同生活で自然と生まれた、いくつかの取り決めのうちのひとつだった。飾ったポスターの代わりに剥がしたポスターはくるくるとまるめて、ふたりの台本やトロフィーが置いてある共有部屋に収めていく。その習慣に従って貼られたポスターを眺めながら、百々人が困ったように苦笑した。
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DONEなっぱっぱさんとの鋭百合同誌の再録です。(2022/7月)お題になった頭文字はWです。ラスト気に入ってます。
Watercolor 潮騒が未だに鳴り止まない。歓声のような満ち引きは海から離れても心のどこかで続いていて、プロデューサーの運転する車の窓から見える海は夕日で茜に染まっていた。夏空に沈む夕焼けは柔らかく、昼間のような暴力めいた輝きを潜めて眠たそうにしている。
助手席には秀がいて俺の隣には百々人がいる。百々人はプロデューサーのことが好きなはずなのに、こういうときは必ず後部座席に座っていた。秀は助手席を希望することが多く俺は座席にこだわりはない。なので、いつの間にかこれが俺たちの『お決まりの座席』になっていた。
海が見えるのは百々人が座っているほうの窓なので、俺は百々人越しに夕日が水平線に沈む様を見ていた。百々人の色素が薄い髪にもうっすらとオレンジが灯っていた。百々人も、窓を見ていた。
11836助手席には秀がいて俺の隣には百々人がいる。百々人はプロデューサーのことが好きなはずなのに、こういうときは必ず後部座席に座っていた。秀は助手席を希望することが多く俺は座席にこだわりはない。なので、いつの間にかこれが俺たちの『お決まりの座席』になっていた。
海が見えるのは百々人が座っているほうの窓なので、俺は百々人越しに夕日が水平線に沈む様を見ていた。百々人の色素が薄い髪にもうっすらとオレンジが灯っていた。百々人も、窓を見ていた。
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DONEなっぱっぱさんとの鋭百合同誌の再録です。(2022/7月)お題になった頭文字はVです。
Video『見せたいものがある』
マユミくんがそう言うとき、僕は少しだけドキドキする。それは出会ってから二年経った今も変わらない。
最初は不安が大きかった。胸がぎゅってなるようなドキドキだ。なんで僕なんだろう。せっかく見せてくれたのに、望むリアクションを取れなかったらどうしよう。そういう不安を隠しながら、精一杯笑ったのを覚えてる。
一回目、アマミネくんのいないマユミくんの家で見せてくれたのはチェス盤だった。遊具というよりはアンティークと言うのが正しいその佇まいは僕を萎縮させるには充分で、そのときの僕は疑問で頭がいっぱいになってしまったんだ。
『マユミくん、』
どうして、と言う前にマユミくんが口を開いた。
『百々人の、次の役作りの参考になるかと思って』
6660マユミくんがそう言うとき、僕は少しだけドキドキする。それは出会ってから二年経った今も変わらない。
最初は不安が大きかった。胸がぎゅってなるようなドキドキだ。なんで僕なんだろう。せっかく見せてくれたのに、望むリアクションを取れなかったらどうしよう。そういう不安を隠しながら、精一杯笑ったのを覚えてる。
一回目、アマミネくんのいないマユミくんの家で見せてくれたのはチェス盤だった。遊具というよりはアンティークと言うのが正しいその佇まいは僕を萎縮させるには充分で、そのときの僕は疑問で頭がいっぱいになってしまったんだ。
『マユミくん、』
どうして、と言う前にマユミくんが口を開いた。
『百々人の、次の役作りの参考になるかと思って』
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DONEなっぱっぱさんとの鋭百合同誌の再録です。(2022/4月)お題になった頭文字はRです。すげー脱字があったので訂正してます。
Ramen 百々人と暮らし始めてよかった。横で寝転びならが台本を読んでいる百々人を見ると、心からそう思う。
俺は高校を卒業してすぐに家を出て、半ば強引にあの家から百々人を連れ出して共に暮らし始めた。家族の在り方は人それぞれだし、俺は正しさや間違いを説けるほど成熟してはいない。それでも、一度話を聞いてしまった以上、あの家に百々人を住まわせておくのは一分一秒だって嫌だった。俺は百々人のことが好きで、百々人を取り巻く環境が嫌いだった。
百々人は俺の手を振り払わずにただ笑ってついてきた。一度捨てられているから二度目は傷つかないようにと、自らを守るような、そういう類の笑顔だった。それでも、半年以上経ってそういう笑みは減っていったように思える。ただ無邪気に笑うことが増えて、口を大きく開いて笑うことが増えて、無理をして笑うことがなくなった。
6922俺は高校を卒業してすぐに家を出て、半ば強引にあの家から百々人を連れ出して共に暮らし始めた。家族の在り方は人それぞれだし、俺は正しさや間違いを説けるほど成熟してはいない。それでも、一度話を聞いてしまった以上、あの家に百々人を住まわせておくのは一分一秒だって嫌だった。俺は百々人のことが好きで、百々人を取り巻く環境が嫌いだった。
百々人は俺の手を振り払わずにただ笑ってついてきた。一度捨てられているから二度目は傷つかないようにと、自らを守るような、そういう類の笑顔だった。それでも、半年以上経ってそういう笑みは減っていったように思える。ただ無邪気に笑うことが増えて、口を大きく開いて笑うことが増えて、無理をして笑うことがなくなった。
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DONEなっぱっぱさんとの鋭百合同誌の再録です。(2022/3月)お題になった頭文字はQです。好きな曲のオマージュあります。ハッピーではないですがお気に入りです。
Quiz 気がついたら見知らぬ廊下に立っていた。
廊下と言うよりも一本道と言った方が正しいのかも知れない。真っ黒な壁か、あるいは暗闇に切り取られた通路を僕はまっすぐに歩く。不安も、迷いもなかった。歩くたびに材質のわからない床がスニーカーの靴底をすり減らして、ぎゅむ、と鳴る。
あまり長時間歩いた感覚は無かったが、唐突にそれは現れた。うっすらとした青紫の磨りガラスがはめ込まれた重厚な扉が僕の目の前にあった。扉は何かしらのロマンを得たいときに使用される舞台装置のような装飾が絡みついていて、ドアノブには木札がぶら下がっている。僕はニスの光沢の下に閉じ込められた文字を、誰に聞かせるでもなく読み上げた。
「……『正解すれば幸せになれる部屋』……?』
6769廊下と言うよりも一本道と言った方が正しいのかも知れない。真っ黒な壁か、あるいは暗闇に切り取られた通路を僕はまっすぐに歩く。不安も、迷いもなかった。歩くたびに材質のわからない床がスニーカーの靴底をすり減らして、ぎゅむ、と鳴る。
あまり長時間歩いた感覚は無かったが、唐突にそれは現れた。うっすらとした青紫の磨りガラスがはめ込まれた重厚な扉が僕の目の前にあった。扉は何かしらのロマンを得たいときに使用される舞台装置のような装飾が絡みついていて、ドアノブには木札がぶら下がっている。僕はニスの光沢の下に閉じ込められた文字を、誰に聞かせるでもなく読み上げた。
「……『正解すれば幸せになれる部屋』……?』
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DONEなっぱっぱさんとの鋭百合同誌の再録です。(2022/5月)お題になった頭文字はPです。ファンタジー
Plethora 世界にはたったひとつ、目に見える愛がある。
***
「牙崎くんの髪って、地毛?」
「……あ?」
事務所には髪の色素が薄い人が何人かいるけれど、もしも僕とおなじ人がいるとしたらそれは牙崎くんだけだと思ったからこんな質問をした。よく考えたら失礼な質問だったけど、怒られてもいいって思ってた。
僕の言葉を聞いた牙崎くんは、猫のように周囲を見渡してつまらなそうに口をへの字に結ぶ。ここにはアマミネくんもマユミくんもぴぃちゃんもいないし、僕は牙崎くんにいくつかの和菓子を差し出して、こうして事務所のソファで向かい合っている。それに名前まで呼んでいるんだから、この言葉の向かう先は牙崎くん以外にはないってことは理解してもらえているはずだ。
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「牙崎くんの髪って、地毛?」
「……あ?」
事務所には髪の色素が薄い人が何人かいるけれど、もしも僕とおなじ人がいるとしたらそれは牙崎くんだけだと思ったからこんな質問をした。よく考えたら失礼な質問だったけど、怒られてもいいって思ってた。
僕の言葉を聞いた牙崎くんは、猫のように周囲を見渡してつまらなそうに口をへの字に結ぶ。ここにはアマミネくんもマユミくんもぴぃちゃんもいないし、僕は牙崎くんにいくつかの和菓子を差し出して、こうして事務所のソファで向かい合っている。それに名前まで呼んでいるんだから、この言葉の向かう先は牙崎くん以外にはないってことは理解してもらえているはずだ。
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DONEなっぱっぱさんとの鋭百合同誌の再録です。(2022/4月)お題になった頭文字はLです。
Limit マユミくんと付き合いだして──そういうことをするようになってから、わかったことがある。
「んっ……マユミくん、しつこい……!」
ぺち、とうなじを叩けば、ようやくマユミくんの唇が僕のからだから離れた。見えやしないからと許可した胸元とお腹はキスマークだらけだし、ずっと優しく触れられていた脇腹は未だにぞくぞくと背骨を震わせるし、繋ぎっぱなしだった手から溶け合う感覚でどこまでが僕なのかわからない。そう、マユミくんは前戯が長い。寝転んだ僕はしばらくからだを起こしていないから、マットレスにくっつきやしないかと心配になる。
「……すまない、百々人」
「……別に、いいけどさぁ……」
そういえば始めて叱ったかも。マユミくんはしゅんとしていたけど、僕の二の句を受けたら嬉しそうな顔になって僕の唇に柔らかく噛み付いて舌をいれてくる。マユミくんが目を閉じて幸せそうに舌を絡めてくると、僕だって目を開いている気分ではなくなってしまうから視界を閉ざした。そうなるともう感じるのはマユミくんの舌の柔らかさと温度しかなくて、ひとつ感覚を遮断したことで耳が余計に音を拾う。
2971「んっ……マユミくん、しつこい……!」
ぺち、とうなじを叩けば、ようやくマユミくんの唇が僕のからだから離れた。見えやしないからと許可した胸元とお腹はキスマークだらけだし、ずっと優しく触れられていた脇腹は未だにぞくぞくと背骨を震わせるし、繋ぎっぱなしだった手から溶け合う感覚でどこまでが僕なのかわからない。そう、マユミくんは前戯が長い。寝転んだ僕はしばらくからだを起こしていないから、マットレスにくっつきやしないかと心配になる。
「……すまない、百々人」
「……別に、いいけどさぁ……」
そういえば始めて叱ったかも。マユミくんはしゅんとしていたけど、僕の二の句を受けたら嬉しそうな顔になって僕の唇に柔らかく噛み付いて舌をいれてくる。マユミくんが目を閉じて幸せそうに舌を絡めてくると、僕だって目を開いている気分ではなくなってしまうから視界を閉ざした。そうなるともう感じるのはマユミくんの舌の柔らかさと温度しかなくて、ひとつ感覚を遮断したことで耳が余計に音を拾う。
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DONEなっぱっぱさんとの鋭百合同誌の再録です。(2022/5月)お題になった頭文字はKです。流血・刺殺注意。幸せにはならないです。
Knife リンゴにナイフを突き立てる。駄菓子屋で買ったオモチャのナイフは果実を傷つけることもなく、その紛い物の刃を引っ込ませて大人しく僕の手のひらに収まった。
牛丼よりも安いオモチャのナイフだ。試しに手のひらに当てて少しだけ押し込んでみるけれど、刃は引っ込んで何も起きない。こんなの、ボールペンで刺した方がずっと痛い。
そんな無意味なナイフもどきだが、これは今現在東京都内に潜伏する三六体のマユミくんには覿面に効く。この三六体のマユミくんというのはマユミくんの偽物で、腹立たしいことに彼らは偽物のくせに本物のように背筋を伸ばしてあっちこっちを闊歩している。そんな偽物どもはこのナイフでつつかれると、風船のようにパァン! と破裂していなくなる。
4342牛丼よりも安いオモチャのナイフだ。試しに手のひらに当てて少しだけ押し込んでみるけれど、刃は引っ込んで何も起きない。こんなの、ボールペンで刺した方がずっと痛い。
そんな無意味なナイフもどきだが、これは今現在東京都内に潜伏する三六体のマユミくんには覿面に効く。この三六体のマユミくんというのはマユミくんの偽物で、腹立たしいことに彼らは偽物のくせに本物のように背筋を伸ばしてあっちこっちを闊歩している。そんな偽物どもはこのナイフでつつかれると、風船のようにパァン! と破裂していなくなる。
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DONEなっぱっぱさんとの鋭百合同誌の再録です。(2022/4月)お題になった頭文字はJです。首を絞める描写(殺人描写)があります。
Jealousy 人を殺すのは初めてだ。
ぐ、と力を入れれば、俺の手は百々人の首を締め上げる。ベッドに仰向けになった百々人に覆い被さるようにして、俺は体重をかけて百々人の首を絞める。
シーツがゆっくりと沈んでいき、俺の手で百々人の呼吸が阻害される。手のひらに訴えるように、抵抗のように、血液が脈打っている。そのとき俺が感じていたのは愛ではなく、根源的な恐怖だった。
***
最近の人間は命を軽く見ていると大人は口にする。
大人──おおよそ三十代以上の人間だろうか、彼らにとって命はかけがえのないもので、一度失ったら取り返しのつかない唯一のものだった。
ところが二十年ほど前だろうか。宇宙からの怪電波と新興宗教の過激派がばらまいたウイルスと数十カ国の神々の怒りが重なった年があり、それがたまたま『ゲーム』の世界を現実に引きずり出してしまう事件が起きた。教科書にも載っているその現象は未だに俺たちの世界にはびこっている。
8467ぐ、と力を入れれば、俺の手は百々人の首を締め上げる。ベッドに仰向けになった百々人に覆い被さるようにして、俺は体重をかけて百々人の首を絞める。
シーツがゆっくりと沈んでいき、俺の手で百々人の呼吸が阻害される。手のひらに訴えるように、抵抗のように、血液が脈打っている。そのとき俺が感じていたのは愛ではなく、根源的な恐怖だった。
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最近の人間は命を軽く見ていると大人は口にする。
大人──おおよそ三十代以上の人間だろうか、彼らにとって命はかけがえのないもので、一度失ったら取り返しのつかない唯一のものだった。
ところが二十年ほど前だろうか。宇宙からの怪電波と新興宗教の過激派がばらまいたウイルスと数十カ国の神々の怒りが重なった年があり、それがたまたま『ゲーム』の世界を現実に引きずり出してしまう事件が起きた。教科書にも載っているその現象は未だに俺たちの世界にはびこっている。
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DONEなっぱっぱさんとの鋭百合同誌の再録です。(2022/4月)お題になった頭文字はFです。
Funeral まず、蝉の羽音がした。真夜中に開いた冷蔵庫の音のように断続的に脳にこびりつくノイズから逃れるべく、俺は目を開く。
見えたのは人間の後頭部。そして、視線を少し上に向ければどこまでも高い夏の青空があった。冗談みたいな入道雲を彼方に従え、暴力的な視線で地上を焼いている。
陽炎が立ち上るアスファルトの上に俺たちはいた。俺と、見知らぬたくさんの人間は誰も彼もが真っ黒な服を着て、一列に並んでいる。音は蝉時雨以外には存在せず、列は一向に進まない。
喪服、なのだろう。ここにいる全員が着ている黒い服は、きっと喪服だ。俺は自分の姿を確認する。同じような喪服を着て、手には切り分けられたスイカを持っていた。
列はどこに通じているのだろう。視線をやれば、遠くのほうに時代劇で見るような建物が見えた。名前は知らないが時代劇で罪人を裁くのは決まってあの手の建物だ。葬式には似つかわしくない場所を目指して、葬式の参列者としか思えない人間が並んでいる。
6023見えたのは人間の後頭部。そして、視線を少し上に向ければどこまでも高い夏の青空があった。冗談みたいな入道雲を彼方に従え、暴力的な視線で地上を焼いている。
陽炎が立ち上るアスファルトの上に俺たちはいた。俺と、見知らぬたくさんの人間は誰も彼もが真っ黒な服を着て、一列に並んでいる。音は蝉時雨以外には存在せず、列は一向に進まない。
喪服、なのだろう。ここにいる全員が着ている黒い服は、きっと喪服だ。俺は自分の姿を確認する。同じような喪服を着て、手には切り分けられたスイカを持っていた。
列はどこに通じているのだろう。視線をやれば、遠くのほうに時代劇で見るような建物が見えた。名前は知らないが時代劇で罪人を裁くのは決まってあの手の建物だ。葬式には似つかわしくない場所を目指して、葬式の参列者としか思えない人間が並んでいる。
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DONEなっぱっぱさんとの鋭百合同誌の再録です。(2022/4/10)お題になった頭文字はEです。地味に2ページぴったりに収めるために頑張りました
Earth さらば地球! 僕とマユミくんは火星へと旅立った。
情報規制とは恐ろしく、僕の与り知らぬところで火星への移住計画はずいぶんと進んでいたらしい。科学の技術は日々進化しているのだ。
しかし残念なことに日本という国はなーんにも進んでいなかった。たとえば、同性婚に関わるあれやそれ、とか。なので恋人同士である僕とマユミくんはパートナーとしての関係を結ぶに留まっている。僕は『眉見』にはなっていないので、今もマユミくんをマユミくんと呼ぶ日々だ。はじめましてから八年間変わらない呼び名は手垢がついた年月だけ味わい深くなっていったが、そろそろ新しい風が欲しい。
そんなところに火星移住計画だ。興味本位で取り寄せたパンフレットを眺めるに、人間がいじくりまわした火星はたいそう居心地がよさそうだった。名産品になる予定の果物はおいしそうな見た目をしているし、東京までは爆速スーパージェットスペースシャトルで二時間弱。四季こそないものの気候は温暖で大きな災害もないらしい。家賃はアイドルとして上り詰めた僕たちのお給料なら無理なく払えるし、抽選要項を僕らは満たしている。なにより、火星の法律では同性婚が認められているそうだ。きっとこのパンフレットを作った人間は日本人に違いない。特定の諸外国では当たり前に認められている権利をこれ見よがしにパンフレットに、先進的なアピールとして書いてしまうなんて。
1970情報規制とは恐ろしく、僕の与り知らぬところで火星への移住計画はずいぶんと進んでいたらしい。科学の技術は日々進化しているのだ。
しかし残念なことに日本という国はなーんにも進んでいなかった。たとえば、同性婚に関わるあれやそれ、とか。なので恋人同士である僕とマユミくんはパートナーとしての関係を結ぶに留まっている。僕は『眉見』にはなっていないので、今もマユミくんをマユミくんと呼ぶ日々だ。はじめましてから八年間変わらない呼び名は手垢がついた年月だけ味わい深くなっていったが、そろそろ新しい風が欲しい。
そんなところに火星移住計画だ。興味本位で取り寄せたパンフレットを眺めるに、人間がいじくりまわした火星はたいそう居心地がよさそうだった。名産品になる予定の果物はおいしそうな見た目をしているし、東京までは爆速スーパージェットスペースシャトルで二時間弱。四季こそないものの気候は温暖で大きな災害もないらしい。家賃はアイドルとして上り詰めた僕たちのお給料なら無理なく払えるし、抽選要項を僕らは満たしている。なにより、火星の法律では同性婚が認められているそうだ。きっとこのパンフレットを作った人間は日本人に違いない。特定の諸外国では当たり前に認められている権利をこれ見よがしにパンフレットに、先進的なアピールとして書いてしまうなんて。
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DONEなっぱっぱさんとの鋭百合同誌の再録です。(2022/4/10)お題になった頭文字はDです。
Dance ざらざらとした薄暗闇の中にいる。ぽっかりと空いたクレーターみたいに広いシアタールームで、僕とマユミくんはたったのふたりきりだ。
光源は目の前のモニターだけで、そこには華美な衣装に身を包んだマユミくんと、同じくらい華やかなドレスをまとった知らない女性が映っていた。見つめ合い、手を取り合って、音のない世界で優雅に踊る。ブルーレイを読み取るプレイヤーの音だけが、開きっぱなしの冷蔵庫みたいに鳴っている。
踊るのに音楽はない。そういう趣旨のプロモーションビデオだ。実際にはリズムを取るためのメトロノームが健気に働いていたらしいが、セピアの効果をつけられた映像にその響きは存在しない。役割のあったもの、必要とされた音、ワルツを指揮していたリズム。そういうものが全て、呆けた飴色に覆われてしまっている。
4241光源は目の前のモニターだけで、そこには華美な衣装に身を包んだマユミくんと、同じくらい華やかなドレスをまとった知らない女性が映っていた。見つめ合い、手を取り合って、音のない世界で優雅に踊る。ブルーレイを読み取るプレイヤーの音だけが、開きっぱなしの冷蔵庫みたいに鳴っている。
踊るのに音楽はない。そういう趣旨のプロモーションビデオだ。実際にはリズムを取るためのメトロノームが健気に働いていたらしいが、セピアの効果をつけられた映像にその響きは存在しない。役割のあったもの、必要とされた音、ワルツを指揮していたリズム。そういうものが全て、呆けた飴色に覆われてしまっている。
tama
DONESH後に🍚ちゃんが🥃さんの元へ行き修業をつけてもらうといった話……その中でも特に好きな318人編のところ(🥗🍚要素もあり)正直このPQ 見て🥃🍚の可能性に改めて目覚めました🥺
🍚ちゃん…力の大会でビル飯アリだな…となってまた更にウイスさんにも目をつけられて…破壊神&天使×🍚という当時は全くのノーマークだったcpに目覚めさせられるなんて飯沼ヤベェわ 5
yuzuki_Lie
SPOILERしんはやのネタバレ含みます通過済みの人だけOK
なっぱさんも通過するまでだーめよ
ふせったーが自動ツイートじゃなくなったから
こういう事も出来るのイイネ
愛果の表情差分さ、○○○○○○○○○○目線合わせて○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○
あと○○○○○○○○○○○○○○○○○○ https://fusetter.com/tw/kKLHeyo7 5