転生現代家族パロディリヴァハン⭐︎
　妻を病院に連れて行った。
　ある朝のことだった。自分より早いか、同じくらいの時間帯に出勤する妻だが、その日はえらくのんびりとしていた。有給休暇でも取得したのかと一度は思ったが、雰囲気が違うことにすぐ気付いた。外着に着替えているから家で過ごすわけではないのだろうが、それにしては余りにも洒落っ気がない。まるで「出るだけ」と言った格好だった。なにより、リビングの家族の病院診察券を保管するチェストの引き出しを開けていた。自分が病院や個人医院ごとにアルファベット順に並べ、更に家族の名前の順に並べたカード群の中から目当てのカードを引き抜いて財布にしまうのをしっかりと見た。
　「お前。体調が悪いのか」
「あー、うん。そうなんだよね〜。あんまり続くからさ。たまたまじゃなさそうだし、いい加減診察だけ受けておこうと思って」

お兄ちゃん、ガチャ「お前の兄ちゃんさ──……」
「あ、兄貴？　もうさ──……」
　なぜか"兄貴"という言葉に昔から反応してしまう。俺には兄貴はいない。なのに気になってしまう。
　とりあえず、俺はチームメイトの与太話には気にしないフリをして練習を続けた。

　そろそろ帰るか。
　散らばったサッカーボールを集めて、カゴにいれる。それをガレージに押し込んで、ようやく片付けが終わる。
　はぁ、と一息ついて、エナメルバッグを担いで、サッカーコートを後にした。
　アイスでも買って帰るかといつもの帰り道から外れ、コンビニのある通りへ出た。コンビニに行くときにはいつも通る道のはずだった。
　は？こんなところにゲームセンターなんかあったか……？