五十嵐先生
琴事。
DONE公英組でお話させていただいた、マムシさんと五十嵐先生の出会ったばかりのころの話。マムシさんお借りしました~~!
自己暗示「先生、ちょっといいですか」
呼ばれて、足を止めて振り返る。ここで「先生」と呼ばれるのは、己だけだと分かっていたから。
振り返れば、そこに居たのは最近鼓の組に入った女だった。小柄で、けれどその迫力はこの業界で生き残るのに十分であろう、凄みを持った女。確か、マムシ、なんて呼ばれていたか。
「どうした、なんかやったか」
そう問いかけはしたものの、その体に傷は見えない。別の誰かの負傷だろうか、考えながら応えを待てば、それは想定外の物だった。
「あたしに、人の体の仕組みを教えてください」
思わず眉を顰めてしまったのは、その女の所属を知っていたからだ。スイーパー、なんて横文字で呼ばれているそれは、つまるところ暗殺やら隠蔽工作やら、分かりやすく後ろ暗い仕事を担当している部署だ。だから、そんな女が人体の仕組みを知りたがるなんて、その使い道は推して知るべしである。
1952呼ばれて、足を止めて振り返る。ここで「先生」と呼ばれるのは、己だけだと分かっていたから。
振り返れば、そこに居たのは最近鼓の組に入った女だった。小柄で、けれどその迫力はこの業界で生き残るのに十分であろう、凄みを持った女。確か、マムシ、なんて呼ばれていたか。
「どうした、なんかやったか」
そう問いかけはしたものの、その体に傷は見えない。別の誰かの負傷だろうか、考えながら応えを待てば、それは想定外の物だった。
「あたしに、人の体の仕組みを教えてください」
思わず眉を顰めてしまったのは、その女の所属を知っていたからだ。スイーパー、なんて横文字で呼ばれているそれは、つまるところ暗殺やら隠蔽工作やら、分かりやすく後ろ暗い仕事を担当している部署だ。だから、そんな女が人体の仕組みを知りたがるなんて、その使い道は推して知るべしである。
琴事。
DONE鼓組長と五十嵐先生の出会いの話。鼓組長お借りしました~~
結び目「……あ?」
とある組に呼び出されて、傷を負った組員を治療して帰ってきた帰り道。飯どうすっかな、なんて考えながら歩いていた途中で、ガキが落ちているのを発見した。
思わず足を止めて、じっと眺める。この距離では、生きているのか死んでいるのかの判別がつかない。
はぁ、と一つため息を零してからまた歩き出す。無視しようと思った。この業界じゃ、よくあることだ。ガキが一人、行き倒れてることなんて。二十年近くこの場所に居て、すっかり理解していることだった。
理解していること、のはずなのに。
「おい、生きてるか」
気づけば、膝をついてそう声をかけていた。近くに寄れば、胸が上下しているのが分かるものの、声かけに対する返事はない。意識はないのか、などど脳内でメモを取りながら、その体に触れる。その表面が驚くほど冷たくて、思わず呼吸があるか再確認してしまった。変わらず胸は上下している。なら、ずいぶん長いことここで一人倒れていたのだろうか。考えながらも、体は動く。その体を背負って、一度下した器具類の鞄を再び持って。
3776とある組に呼び出されて、傷を負った組員を治療して帰ってきた帰り道。飯どうすっかな、なんて考えながら歩いていた途中で、ガキが落ちているのを発見した。
思わず足を止めて、じっと眺める。この距離では、生きているのか死んでいるのかの判別がつかない。
はぁ、と一つため息を零してからまた歩き出す。無視しようと思った。この業界じゃ、よくあることだ。ガキが一人、行き倒れてることなんて。二十年近くこの場所に居て、すっかり理解していることだった。
理解していること、のはずなのに。
「おい、生きてるか」
気づけば、膝をついてそう声をかけていた。近くに寄れば、胸が上下しているのが分かるものの、声かけに対する返事はない。意識はないのか、などど脳内でメモを取りながら、その体に触れる。その表面が驚くほど冷たくて、思わず呼吸があるか再確認してしまった。変わらず胸は上下している。なら、ずいぶん長いことここで一人倒れていたのだろうか。考えながらも、体は動く。その体を背負って、一度下した器具類の鞄を再び持って。