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    SPUR ME【謝罪の極み】ワンライ叶わず
    ま、まにあいませんでした
    monthly龍千_11月 ペルセウスは北米に到着した。降り立ったエリアに特設のキャンプサイトを設置し、俺たちのアジトが出来上がるまでものの数時間。オンスケジュールの航海もサバイバル然とした生き方も、経験を会得した海の民たちにはすっかり手慣れたものだ。そのバイタリティとタフネスをもって住環境が整えられ、そうして着実にロードマップの駒を進めているところだった。
    「龍水様の具合に違和感があります。ちょっと席を外させていただきます」
    「?」
     昼時のこと。食事の準備にシュトーレンを手にしたフランソワが徐にこんなことを呟いた。龍水の体調が悪いらしい。フランソワは言わずもがな対龍水限定の臨床心理士であり、かかりつけ医であり、親かそれ以上のエスパーじみた千里眼を持つのだ。だから疑う余地なく俺もそれが気に留まって、持ち出し用のミニ窯をいじくっていた手を止めて視線をあげた。航海を短いスケジュールでの強行突破したのだ、無理をさせた自覚はある。いくら自己管理の鬼と言えど少しは堪えたに違いない。例えば心因性の眩暈とか、胃腸の調子とか、整体的な筋骨の不具合とか。はたまた自律神経系の疾患だって、龍水がどれを患っていても責められる立場ではないのだ。そうだとして、薬の存在。心身のリラックスのためのマッサージのエトセトラがさて間に合うだろうか。そんな調子で俺なりに相当な心配を過らせながら見渡して、すると十数百メートル先のところにあいつは居た。いつもの身なりでしゃんと立ち、司と何か喋っている。
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