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    Comehappy2525

    DOODLE羽藤です 7話前提
    怖いもの知らず「ねぇ、藤哉さん」

    我慢はやめましょうよ、と目の下に隈が浮き脂汗をたらす頬に指を滑らせる。また少し痩せたようだ。肌がカサついている。

    藤哉さんは、小隊長として辣腕を奮っていた姿から変わり果ててしまった。龍脈というのはそれほどまでに苛烈なモノらしい。少しの瑕疵も見当たらない、闊達とした物言い、素晴らしい祕術の腕前、部下や目下への公正な態度、時折見せる…鋭い龍の瞳。俺にとって龍守藤哉ーー藤哉さんは刺激的な存在で、いつか彼の人の指揮下で力を振るうのが夢だった。夢はあっさりと叶い、そして破れた。渡来口の封印が破れ司令部が討ち死にしたあの日、藤哉さんは俺たちに自分が死んだ後のことまで考えて動かなければならん、と言った。結界を解き、原子炉を守るその作戦は、これ以上なく現場に即したものであり、更に責任をも任されると請け負ってくれた。これだから堪らない。身を焼く様な興奮が体を駆け抜けて、だが気取られないよう微笑む。やるべき事を行う為その場から駆け出した俺は、後にどんな未来が自分たちに訪れるのかを考える暇がなかった。天を裂く光が禍獣たちを残さず焼き払う。まるで闇を裂く剣のような一閃、膠着した状況に放たれた清廉な矢の如し一撃だった。龍守術師が龍脈を使用、意識不明の重体。部下からの報を聞いた俺は、高揚していた体が急速に冷えるのを感じた。夢は果てを迎え、そして後には現実だけが残された。
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    まさのき

    DONEアンデルセンの「雪の女王」をわりとまじめにパロったカイ潔(+糸師兄弟)です。藤田貴美さんの漫画版に多大なインスピレーションをいただいてます。中盤までカイザーの気配が皆無ですが、ちゃんとカイ潔です。

    ゲルダ→潔(と冴)、カイ→凛、盗賊の娘→カイザー
    花待ちの窓雪の晩に、枕べで聞く物語



    第一のお話 はじまり


     昔、むかしのお話です。ここではないどこか遠くの国の、知らない土地の、小さな箱庭の村に、ひっそりとよりそい合って暮らす、三人の子どもたちがおりました。三度の春と冬のあいだに生まれた彼らは、名前をそれぞれ冴、世一、凛といいました。赤髪の冴は、三人の中ではもっとも年長で、その下に世一と凛が続きます。泣き虫世一と、やんちゃな凛、面倒見のよい冴の三人組は、遊ぶときも、出かけるときも、眠るときでさえもいつも一緒でした。血をわけた兄弟である冴と凛は、となりの家に住む世一のことを、まるで本当の兄弟のようにたいせつに思っていました。世一だって、冴と凛の二人と血がつながっていないことなんて、つゆとも気にしたことはありません。だって、朝も昼も夜も、扉を開けばそこに冴と凛が立っていて、ふたりといれば、世一に怖いものなんて、なんにもなかったのです。三人は野を駆けて遊び、泥まみれになって眠り、手に手をとって、いつまでもいつまでも仲むつまじく暮らしていました。
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