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    行ってみた

    samuiwaks

    PAST司類です。過去作ですがEND直前の顛末を(当社比)決定的に変えました。
    書き換え作業を行ってみたら私の中でいつの間にか司類の解釈だいぶ変わったんだなと感慨深く思いました。
    【司類】終点駅はまだ来ない終点駅はまだ来ない




    「君と出会うまではね、僕は365日、ずっと水底にいるみたいだったんだ」
     ふいに口を開いた類は、隣に座る司を振り返って「そういえばね」とまるで昨日食べた夕食の献立はハンバーグだったんだと伝えるかのような気軽さで、司に向かってそう言った。
    「む?」
     司が首をひねると、まもなくドアが閉まります、ご注意ください、とのアナウンスが流れ、電車のドアが音を立てて閉まる。今回の駅でも乗り込む人は一人もいない。
    「それは……ええっと、どういう意味だ?」
     下りの電車は土曜の午後だというのに静まり返っていた。車両ごとにまばらに人がいる程度で、昨今話題のソーシャルディスタンスというものを実現している。電車が揺れ、司が両脚で挟んでいる学生鞄がそこから抜け出し、司がそれを戻そうと手を伸ばして身を乗り出せば、電車はちょうど大河の上に架けられた橋に差し掛かった。深い深い青色の水面に太陽の光が反射し、きらきらと光り輝く。
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