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    zeppei27

    DONEなんとなく続いている主福のお話で、単品でも読めます。新年の準備は年末から!新年の準備を頑張る人々と、餅に振り回される二人のお話。ちょっとシリアスで切な目です。

    >前作:お揃い
    https://poipiku.com/271957/10947874.html
    >まとめ
    https://formicam.ciao.jp/novel/ror.html
    鬼が笑う 冬がどんどんと日々を侵食してゆく。寒さに震えていたかと思えば、もう次の年が来るのだと今年の手仕舞いが叫ばれる。師走という名を、隠し刀はただの記号としか認識していなかったが、人間らしい生活をするようになってようやく言葉の意味を理解した。師走は師匠だけではない、あらゆる人々が駆けずり回る時なのだ。商家はツケの回収に走り、借金取りも今日までですよと大声で叫び立てる。煮炊きする音がどの家からも絶えず、正月飾りや晴れの揃えは飛ぶように売れていた。人影のまばらな路地ではこっそり、春駒の練習をする鳶がいたりもする。
     人は皆等しく残り少ない今年を噛み締め、新しい時を迎え入れるのだ。太陽が上って、沈んで、また上るだけのことがこんなにも大袈裟で意味深い。故郷では、正月の支度らしい支度もなかったな、と隠し刀はぼんやりと市井の勢いに飲まれた。自分も何かをしなければいけないような気がする。だが、何を?何をすればこの年末年始を人らしく過ごせたと思えるだろう。
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