むつき
DONEタネトモ+主人公(+ヨリトモ)バレンタインスノーファイトイベントの頃
その者の器 あちらの山を眺めてもこちらの足元を確かめても、見事なまでに白一色だった。一向に溶けない雪の上、雪は新たに降り積もり、リゾート施設へやってきた者たちの心を浮き立たせる。
「貴方様は、将の器に生まれながら……」
言葉を乗せてこぼれた息は、たちまちのうちに白く凍っていった。慣れないスノーウェアを身に着けているのは二人とも同じだ。タネトモの言葉を受けた彼は、ファーのついた襟になかば口元を埋めながら顔を輝かせた。
「将の器? ほめてくれて嬉しいな。じゃあ俺、将を目指そうかな」
彼の眼差しは澄み切っていて、目の前の参謀を試しているようには見えなかった。周囲からは破天荒と評されつつも、自ら立てた計画を完遂する彼の力には目を見張るものがある。やるといえばいかに無謀であってもやってのける、その気概と能力を備えている人物だった。
1130「貴方様は、将の器に生まれながら……」
言葉を乗せてこぼれた息は、たちまちのうちに白く凍っていった。慣れないスノーウェアを身に着けているのは二人とも同じだ。タネトモの言葉を受けた彼は、ファーのついた襟になかば口元を埋めながら顔を輝かせた。
「将の器? ほめてくれて嬉しいな。じゃあ俺、将を目指そうかな」
彼の眼差しは澄み切っていて、目の前の参謀を試しているようには見えなかった。周囲からは破天荒と評されつつも、自ら立てた計画を完遂する彼の力には目を見張るものがある。やるといえばいかに無謀であってもやってのける、その気概と能力を備えている人物だった。
むつき
DONEタネトモ+主人公ヨリトモの話をする二人
支度 廊下の先、細く開いた扉の向こうからは、温かなみかん色の光がこぼれている。肉や野菜を煮た食欲を誘う香りも漂ってきて、タネトモはふと足を止めた。
軍の幹部たちが食事をとるための小さな一室だが、階下にある大食堂でも同じように食事の支度がなされているに違いない。あたたかな料理の香りは直に廊下を伝って広がり、宿舎にいる者たち皆の元へと届くだろう。
部屋の中には誰かがいるらしく、廊下の壁にこぼれてくる灯りは時折遮られてちらちらと動く。動きと動きの合間に熟慮が入るのか、光の揺らぎは不規則だ。どうも手慣れたスタッフの動きではないと、タネトモは半ば訝しみながら近付いていくと、ドアノブを静かに引き開けた。
食卓の上には、いつもと変わらずほんの数人分だけの食事が用意されようとしている。折敷の上に並べられた椀、艶のある塗り箸。小鉢のひとつを覗き込んで盛り付けを調整しているのは、事もあろうに総大将の弟だった。
2391軍の幹部たちが食事をとるための小さな一室だが、階下にある大食堂でも同じように食事の支度がなされているに違いない。あたたかな料理の香りは直に廊下を伝って広がり、宿舎にいる者たち皆の元へと届くだろう。
部屋の中には誰かがいるらしく、廊下の壁にこぼれてくる灯りは時折遮られてちらちらと動く。動きと動きの合間に熟慮が入るのか、光の揺らぎは不規則だ。どうも手慣れたスタッフの動きではないと、タネトモは半ば訝しみながら近付いていくと、ドアノブを静かに引き開けた。
食卓の上には、いつもと変わらずほんの数人分だけの食事が用意されようとしている。折敷の上に並べられた椀、艶のある塗り箸。小鉢のひとつを覗き込んで盛り付けを調整しているのは、事もあろうに総大将の弟だった。