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    むつき

    @mutsuki_hsm

    放サモ用文字書きアカウントです。ツイッターに上げていた小説の収納庫を兼ねます。

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    むつき

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    タネトモ+主人公(+ヨリトモ)
    バレンタインスノーファイトイベントの頃

    #東京放課後サモナーズ
    tokyoAfterSchoolSummoners
    #ヨリトモ
    oldFriend
    #タネトモ

    その者の器 あちらの山を眺めてもこちらの足元を確かめても、見事なまでに白一色だった。一向に溶けない雪の上、雪は新たに降り積もり、リゾート施設へやってきた者たちの心を浮き立たせる。
    「貴方様は、将の器に生まれながら……」
     言葉を乗せてこぼれた息は、たちまちのうちに白く凍っていった。慣れないスノーウェアを身に着けているのは二人とも同じだ。タネトモの言葉を受けた彼は、ファーのついた襟になかば口元を埋めながら顔を輝かせた。
    「将の器? ほめてくれて嬉しいな。じゃあ俺、将を目指そうかな」
     彼の眼差しは澄み切っていて、目の前の参謀を試しているようには見えなかった。周囲からは破天荒と評されつつも、自ら立てた計画を完遂する彼の力には目を見張るものがある。やるといえばいかに無謀であってもやってのける、その気概と能力を備えている人物だった。
     将を目指す。それはつまり、このギルドから離反するということだろうか。彼の戦力が味方であればこそ頼もしいものの、敵にまわるとなればたまったものではない。
     あるいは謀反ということも考えられる。もしそうであるならば、こんなところで凍りついている場合ではない。「源」の御方へ、速やかに報告を。また、あるいは。
     にこやかな表情を崩さないまま相槌を打ちながらも、タネトモの思考は次にとるべき行動を何通りにも計画していく。そんな彼女をまっすぐに見つめ、彼は朗らかな笑顔を浮かべた。
    「なんてね。言ってみただけ」
    「……あら。そうなのですか?」
    「俺は自分が将の器だなんて思わないよ。タネトモはひとを乗せるのがうまいからなぁ」
     あっさりと言ってのけ、くすくすと笑う。タネトモの言葉は、お世辞としてしか受け止められていなかった。
    (……私の言葉は、信じられていない)
     それはこの軍の参謀として、看過できぬことなのではないだろうか。けれどそれと同時に、彼であれば信じないのは至極当然である気もした。彼は自分の流儀のままに行動している。聞き入れる耳を持つとすれば、それは彼の兄が言葉を発した時だけだ。
    「俺はね」
     まっすぐな言葉が耳を打つ。
    「俺は、ヨリトモの役に立てればそれでいいよ」
     望みは、たったのそれだけだというように。
    「わがままだけどね」
     目元をほころばせたまま、すまなさそうに告げる。眉がひっそりと曇って、それはさびしそうな微笑みだった。
    (……この弟君が)
     黙って長いまつげを伏せて、タネトモは思いを馳せる。
    (この弟君が、いつか閣下の御心を殺すのだろうか)
     このさびしき世において、肉親とはいえここまでの忠義の心をいだける者など多くはいない。だからこそ手放せず、それでいて恐ろしい。
     寡黙な大将の、心の底を思った。
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