リゾートバイト 強い陽射しの下で浮かれたお客が落としていったホットドッグの包み紙や、ジェラート用のプラスチックスプーン。繰り返し寄せる波がどこかから運んできたビールの空き缶は無数の傷をつけ、ぐしゃりとつぶれている。
そういったごみは、気付けば波打ち際のあっちにもこっちにも落ちていた。ごみだけれど、そのひとつひとつに誰かのひとときの思い出が詰まっているような気がして、サモナーはそれらを毎日丁寧に拾い集める。
遊泳エリアを閉めたあとの夕暮れ、それから次の日の早朝。何人ものスタッフが何度もチェックした波打ち際はごみひとつ落ちていない。砂はこまかく、真っ白に光っていてきれいだ。
自分以外、まだ誰の姿もない浜辺に立ち尽くし、サモナーはただ海を眺めていた。波の音が繰り返し耳を洗う。室内にいたらまだ暗いであろうこの時刻、海の遠くにそびえたつ壁以外に遮るもののない海は、すでに明るくなり始めていた。
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