tennin5sui
DOODLEセリフいただいて短いお話書くやつ!今回は星空散歩さんからいただきました
「俺を王子様にしてくれよ」 表紙がツヤツヤとしていて、寸法は200mmの正方形。絵の具を原色のまま塗ったような鮮やかな色彩で、ドレス姿の少女が描いてある。大型スーパーの書籍コーナーに置いてあるような、薄っぺらく、安っぽい絵本だ。その絵本が蜜柑の部屋の中に山と積まれているのは、もちろん趣味などではなく、仕事のためだ。在庫の保管のためだというが、単なる在庫管理で便利屋を使うわけがない。何かの訳ありの品なのだろう。どれも新品らしい、細長い紙で束ねられており、山ごとに本の種類が分けられている。一度は見聞きしたことがある童話のタイトルばかりだ。
蜜柑の隣に寝転んでいた檸檬が、手持ち無沙汰なのか、ベッドの上から手を伸ばして束から一冊を抜き取った。おい、と嗜めるが、あとで戻すから心配するなよ、とページを捲る。単行本と比べても分厚く作られているページは、パラパラと軽快な音を立てる。
913蜜柑の隣に寝転んでいた檸檬が、手持ち無沙汰なのか、ベッドの上から手を伸ばして束から一冊を抜き取った。おい、と嗜めるが、あとで戻すから心配するなよ、とページを捲る。単行本と比べても分厚く作られているページは、パラパラと軽快な音を立てる。
tennin5sui
DOODLE初キス書きすぎでは?檸蜜初キス 視線。
何気ない風に蜜柑の方へ顔を向けると、最初から見てませんでした、とでも言っているかのように、目を逸らされる。映画のエンドロールの流れるテレビ画面は単調だ。狭い一人暮らしの、他に見るものといえばトーマス君のプラレールしかない部屋に逃げ場があるとは思えないが、蜜柑は逃げた。
言いたいことがあるなら言えばいいのに、と思う。注がれる視線の行き先は、大抵、首筋や、耳元や、そして口元なんかが多い。最初は、ゴミでもついているのかと思った。次第に、その視線の意味するところを理解するようになった。
そういうこと、なんだろうと思う。
「なんかついてるか」
「いや、何もついてない」
ぶっきらぼうなやり取りは、会話というよりも、予防線を引いて、それを踏み越えていないことを確認する作業に近い。
904何気ない風に蜜柑の方へ顔を向けると、最初から見てませんでした、とでも言っているかのように、目を逸らされる。映画のエンドロールの流れるテレビ画面は単調だ。狭い一人暮らしの、他に見るものといえばトーマス君のプラレールしかない部屋に逃げ場があるとは思えないが、蜜柑は逃げた。
言いたいことがあるなら言えばいいのに、と思う。注がれる視線の行き先は、大抵、首筋や、耳元や、そして口元なんかが多い。最初は、ゴミでもついているのかと思った。次第に、その視線の意味するところを理解するようになった。
そういうこと、なんだろうと思う。
「なんかついてるか」
「いや、何もついてない」
ぶっきらぼうなやり取りは、会話というよりも、予防線を引いて、それを踏み越えていないことを確認する作業に近い。