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    tennin5sui

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    初キス書きすぎでは?

    #檸蜜

    檸蜜初キス 視線。

     何気ない風に蜜柑の方へ顔を向けると、最初から見てませんでした、とでも言っているかのように、目を逸らされる。映画のエンドロールの流れるテレビ画面は単調だ。狭い一人暮らしの、他に見るものといえばトーマス君のプラレールしかない部屋に逃げ場があるとは思えないが、蜜柑は逃げた。
     言いたいことがあるなら言えばいいのに、と思う。注がれる視線の行き先は、大抵、首筋や、耳元や、そして口元なんかが多い。最初は、ゴミでもついているのかと思った。次第に、その視線の意味するところを理解するようになった。

     そういうこと、なんだろうと思う。

    「なんかついてるか」
    「いや、何もついてない」
    ぶっきらぼうなやり取りは、会話というよりも、予防線を引いて、それを踏み越えていないことを確認する作業に近い。
     蜜柑が油断していた時に、パッと振り返ったことがある。ほんの一瞬だけ、目が合った。すぐに逸らされる視線のしっぽを捕まえれば、それは温かいものに見える。蜜柑はその温度が、嫌なんだろうな、と思う。
     檸檬にとっては、その温度が、たとえ恋であっても、もしくは愛であっても、どちらにしてもよく解らないのだから、蜜柑の唇に、自分の唇をのせるのだって、なんの問題もなかった。
     映画のエンドロールが終わり、しばしの無音の中に、焦る蜜柑が座りながら後ずさる音だけが響く。一瞬触れただけだというのに、心音が聞こえてきそうなほどの動揺を隠す余裕もないらしい。
     微笑ましくなって、笑みが溢れてしまう。蜜柑は、何か言おうとしているのか、あ、と口を開いては、少し閉じて、また目線だけが下を向く。

    「そんなに嫌がるなっての」
    どうしたんだよ、しっかりしろよと肩に手を掛ける。確かに、一言でも発したら目から涙が溢れそうな、そんな顔をしている。
    「俺は嫌じゃなかったけどな」
    けど蜜柑が耐えられない、という顔をしているから、目を瞑った。そのまま、また蜜柑の唇に触れる。少し噛んで、離して、何か言われる前に言葉を舐めとる。

     そんなことを繰り返しているうちに、頬に温かいのものが滴る。その顔を見ないように、蜜柑をしっかりと抱きかかえる。
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