kyou/京式
DONEエルリワンドロお題「忘れ物」ノビ高の先生たちはいつも自然体で仲良し
まだ少し早い夕陽が落ちかかり、最終下校時刻の校内放送が始まったところだった。
一階の渡り廊下を「お疲れ様」と会釈してすれ違いざまに呼び止められて、振り向くまもなく小さな手が背に当てられる。
「動くな」
「なんだ?」
「動くなと言っている」
リヴァイ先生の手は背から右の脇腹へとジャージを伝って移動した。部活後だ、エルヴィンの汗も埃もたっぷりと吸っている。
「汚れるぞ」
リヴァイはそれには応えずいつも通りの涼やかな白衣姿を翻し、そのまま足元にしゃがんだ。何をしているのかと肩越しに覗こうとしても、辛うじて黒髪の真ん中に鎮座する可愛らしいつむじしか見えない。
直ぐにリヴァイは立ち上がり、再びエルヴィンの腰に指を当てた。そのまま上につつと指先を立てて這わせてくる。
758一階の渡り廊下を「お疲れ様」と会釈してすれ違いざまに呼び止められて、振り向くまもなく小さな手が背に当てられる。
「動くな」
「なんだ?」
「動くなと言っている」
リヴァイ先生の手は背から右の脇腹へとジャージを伝って移動した。部活後だ、エルヴィンの汗も埃もたっぷりと吸っている。
「汚れるぞ」
リヴァイはそれには応えずいつも通りの涼やかな白衣姿を翻し、そのまま足元にしゃがんだ。何をしているのかと肩越しに覗こうとしても、辛うじて黒髪の真ん中に鎮座する可愛らしいつむじしか見えない。
直ぐにリヴァイは立ち上がり、再びエルヴィンの腰に指を当てた。そのまま上につつと指先を立てて這わせてくる。
kyou/京式
DONE「はじまり」というお題が素敵だったので。【エルリ】雨の日ならこんな——あ。
向かいの椅子に座る男が形良い唇を開いた。その視線を追うと大きなガラス窓に差し掛かる水滴が一つ、二つ、たちまち数えきれない数になってリヴァイの視界をいっぱいに埋め尽くした。
——ああ。
更に声にならないため息が、似合わぬ大柄な体から空気が抜けたように漏れてくる。まるで散歩に出かけるのを寸前で諦めるよう止められた、実家の犬の様にしおれている。
「雨ですね」
わかりきった事実だが、事実としてリヴァイはあえて口に出してみた。なにしろ、他に話題も無い。
偶然買い物の途中で出会い、少しお茶でも、ぜひにお茶でも。と誘われたのはいいが、予報より早く本降りとなったようだ。
駅近くの小洒落たコーヒーハウスは、週末の昼過ぎという時間も相まってそこそこ混んでいた。待ち合わせしてどこかへ出かけていくのだろう、客たちのかろやかな会話がそこかしこで聞こえ、それぞれ楽しそうに次の目的地へと出発していく。
2031向かいの椅子に座る男が形良い唇を開いた。その視線を追うと大きなガラス窓に差し掛かる水滴が一つ、二つ、たちまち数えきれない数になってリヴァイの視界をいっぱいに埋め尽くした。
——ああ。
更に声にならないため息が、似合わぬ大柄な体から空気が抜けたように漏れてくる。まるで散歩に出かけるのを寸前で諦めるよう止められた、実家の犬の様にしおれている。
「雨ですね」
わかりきった事実だが、事実としてリヴァイはあえて口に出してみた。なにしろ、他に話題も無い。
偶然買い物の途中で出会い、少しお茶でも、ぜひにお茶でも。と誘われたのはいいが、予報より早く本降りとなったようだ。
駅近くの小洒落たコーヒーハウスは、週末の昼過ぎという時間も相まってそこそこ混んでいた。待ち合わせしてどこかへ出かけていくのだろう、客たちのかろやかな会話がそこかしこで聞こえ、それぞれ楽しそうに次の目的地へと出発していく。