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DONE診断メーカーお題の続き、その3です。幸福な朝 ランスに向かった彼らはヨハンネスから話を聞き東の国へ向かって…と、今までのことが頭の中で駆け巡り、トーマスは長くため息をつく。
「一度振り返るとずるずると思い出してしまうな」
すっかり乾いてしまった顔をもう一度洗ってタオルで水気を拭っていると、後ろから誰かの眠たそうな声で呼びかけられた。
「おふぁよう、トム〜」
振り返るとふわぁとあくびをして目を擦るサラがそこにいた。おはようとトーマスが応えてサラに場所を譲ると、彼女も顔を洗った。
「随分と早いじゃないか。まだ夜が明けた頃なのにどうしたんだ?」
「うん、だいぶ体調も良くなったし、今日は久しぶりにパンを焼こうと思って…トムこそどうしたの?」
「俺は……」
質問を返されたトーマスは答えられず口を閉じてしまう。サラが姿を消した日のことを夢で見たなんて、言えるはずがなかった。明るく振る舞っていても心に受けた傷は深く残る。あの日のことは思い出したくないだろうし、それまでの苦労を話したところで、彼女の心が救われることはない。
3997「一度振り返るとずるずると思い出してしまうな」
すっかり乾いてしまった顔をもう一度洗ってタオルで水気を拭っていると、後ろから誰かの眠たそうな声で呼びかけられた。
「おふぁよう、トム〜」
振り返るとふわぁとあくびをして目を擦るサラがそこにいた。おはようとトーマスが応えてサラに場所を譲ると、彼女も顔を洗った。
「随分と早いじゃないか。まだ夜が明けた頃なのにどうしたんだ?」
「うん、だいぶ体調も良くなったし、今日は久しぶりにパンを焼こうと思って…トムこそどうしたの?」
「俺は……」
質問を返されたトーマスは答えられず口を閉じてしまう。サラが姿を消した日のことを夢で見たなんて、言えるはずがなかった。明るく振る舞っていても心に受けた傷は深く残る。あの日のことは思い出したくないだろうし、それまでの苦労を話したところで、彼女の心が救われることはない。
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DONE診断メーカーお題作品の続き、その2です。ゲストキャラでてきます。
世界の終わりに ――その日の夕方、トーマスが帰宅すると、屋敷の使用人たちがバタバタとなにやら慌ただしい様子であった。
何かあったのだろうか? と彼が不思議に思っていると、ちょうどハトコが屋敷の奥からやってきた。
「トーマス君、今帰ったのか……あぁ、やはりお一人で戻られたか」
落胆してため息をついたハトコに、トーマスは怪訝な顔を見せた。
「仕事のときはいつも一人ですが……あの、何か?」
「いいか、トーマス君。落ち着いて聞いてくれ。――サラ君が、いなくなった」
「…は? え、サラが?」
話をにわかに信じられずトーマスは聞き返すと、ハトコは眉間にシワを寄せた。
「君がそう言うのも無理もない。私も報告を聞いて、初めは耳を疑った」
4576何かあったのだろうか? と彼が不思議に思っていると、ちょうどハトコが屋敷の奥からやってきた。
「トーマス君、今帰ったのか……あぁ、やはりお一人で戻られたか」
落胆してため息をついたハトコに、トーマスは怪訝な顔を見せた。
「仕事のときはいつも一人ですが……あの、何か?」
「いいか、トーマス君。落ち着いて聞いてくれ。――サラ君が、いなくなった」
「…は? え、サラが?」
話をにわかに信じられずトーマスは聞き返すと、ハトコは眉間にシワを寄せた。
「君がそう言うのも無理もない。私も報告を聞いて、初めは耳を疑った」
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DONE診断メーカーのお題を2つかけ合わせました。アビスゲートを閉じる旅をしてないトーマスとサラのお話です。
その2、その3まで続きます。
幸福な朝✕世界の終わりに「で、き、たーー!」
サラは居候先のキッチンの石窯からできたてのパンを取り出して、満面の笑みを浮かべた。
こちらに滞在してだいぶ時間は経つが、実家とは勝手が違うキッチンで思うようにうまく焼けず……何度も失敗を繰り返した結果、ついに胸を張れるパンが焼き上がったのだ。
「ん〜〜! やっぱり、できたてのパンの匂いっていいなぁ」
美味しそうな匂いを堪能していると、彼女の弾む声が気になったトーマスがひょっこりとキッチンに顔を出した。
「朝から楽しそうな声がするなぁと来てみたら……できたのかい?」
「うん、そうなの! 私史上、最高傑作のパンよ!」
「それは食べるのが楽しみだな」
「食堂で待ってて! 粗熱を取ったら運ぶから!」
2226サラは居候先のキッチンの石窯からできたてのパンを取り出して、満面の笑みを浮かべた。
こちらに滞在してだいぶ時間は経つが、実家とは勝手が違うキッチンで思うようにうまく焼けず……何度も失敗を繰り返した結果、ついに胸を張れるパンが焼き上がったのだ。
「ん〜〜! やっぱり、できたてのパンの匂いっていいなぁ」
美味しそうな匂いを堪能していると、彼女の弾む声が気になったトーマスがひょっこりとキッチンに顔を出した。
「朝から楽しそうな声がするなぁと来てみたら……できたのかい?」
「うん、そうなの! 私史上、最高傑作のパンよ!」
「それは食べるのが楽しみだな」
「食堂で待ってて! 粗熱を取ったら運ぶから!」