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    color_alto_rs3

    @color_alto_rs3

    作者:アルト
    サークル名:アルト茶房
    トムサラ中心の小説置き場。
    主にTwitterに投下した長文のまとめを置いてます。

    その他の作品はpixivにて
    https://www.pixiv.net/users/2041510
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    診断メーカーお題の続き、その3です。

    #ロマ3
    roma3
    ##トムサラ
    ##お題

    幸福な朝 ランスに向かった彼らはヨハンネスから話を聞き東の国へ向かって…と、今までのことが頭の中で駆け巡り、トーマスは長くため息をつく。
    「一度振り返るとずるずると思い出してしまうな」
     すっかり乾いてしまった顔をもう一度洗ってタオルで水気を拭っていると、後ろから誰かの眠たそうな声で呼びかけられた。
    「おふぁよう、トム〜」
     振り返るとふわぁとあくびをして目を擦るサラがそこにいた。おはようとトーマスが応えてサラに場所を譲ると、彼女も顔を洗った。
    「随分と早いじゃないか。まだ夜が明けた頃なのにどうしたんだ?」
    「うん、だいぶ体調も良くなったし、今日は久しぶりにパンを焼こうと思って…トムこそどうしたの?」
    「俺は……」
     質問を返されたトーマスは答えられず口を閉じてしまう。サラが姿を消した日のことを夢で見たなんて、言えるはずがなかった。明るく振る舞っていても心に受けた傷は深く残る。あの日のことは思い出したくないだろうし、それまでの苦労を話したところで、彼女の心が救われることはない。
    「小腹が空いてしまってな。キッチンになにかあるかなと探しに行こうとしたんだ」
     我ながら下手な言い訳だなとトーマスは思ったが、意外にもサラはくすりと笑ってくれた。
    「トムでもそういうことがあるのね。…じゃあパンが焼き上がるまで一緒にお茶でもどう?」
     トーマスは誤魔化せたことに内心ホッとして、彼女の誘いにいいよと応えた。

     ――キッチンにて、サラは石窯から焼き途中の丸パンを一度取り出し、それをまた元に戻して石窯の扉を閉める。
    「こうやってね、焼き加減を一度は目で見て調節してあげると美味しいパンができるのよ。あとは、時間までに焼き上がったら完成!」
     そう言ってサラは、近くにあった砂時計をくるりと回転させる。
     彼女から美味しいパンを焼き方のレクチャーを受けたトーマスは、顎に手を当てて感心した。
    「なるほど。サラのあの美味しいパンには、そういう工夫があってできてたわけか」
    「そうよ。何度も失敗を繰り返して試してきたかいがあったわ…」
     感慨深く言った彼女の肩に、トーマスはポンと手を置き頑張ったなと労いの言葉かけると、サラはありがとうと言って微笑んだ。
    「さて、せっかく絶品のパンを頂くのだから、俺はそれに合うものでも準備しようかな」
     ちょっと何かあるか見てくるよと、トーマスは鼻歌を歌いながら食料貯蔵庫へと向かった。
     数分後……サラはお茶を飲んで待っていると、両手いっぱいに食材を抱えたトーマスが戻ってきた。
    「いろいろ持ってきたのね! ソーセージと卵と野菜にチーズ…何を作るの?」
     それらをキッチンの作業台に置いたトーマスにキラキラした目でサラが聞くと、彼は苦笑してみせた。
    「期待しているところ悪いが、野菜を切ってパンに挟むだけの簡単なやつだよ」
     彼は腕まくりをして手と食材を洗う。そして野菜を切り始めてそのまま会話を続ける。
    「サラも食べるか?」
    「え? あ、うーん……」
     顎に手を置いて小声でどうしようとサラは悩む。そんな彼女の様子にトーマスはあることに気づく。
    「あ、そうか。サラはラズベリージャムのほうがいいんだったな」
     彼女の幸せな朝にする条件を思い出した彼はごめんなと謝り、自分の分だけ切り分けようと他の野菜に手を付けようとしたが…
    「ま、待って! あの…私の分もお願いできる?」
     予想と違った答えが返ってきたことに驚き、トーマスは一旦手を止めてサラの方を見る。
    「いいのか? だってサラにとってラズベリージャムは……」
    「好きなものはいつだって食べたいものよ。だけどね……」
    「だけど?」
     真面目な顔をして聞き返すと、サラの頬は赤く染まる。
    「今日は……トムと同じものを一緒に食べたい」
    「…わかった。そうするよ」
     彼女の素直な気持ちを聞いたトーマスは、半分残っていた野菜を手元に戻してまた切り始めた。
    「ありがとう、トム。私も手伝うわね!」
    「いいよ、やらなくて。サラは前日からパンの仕込みで頑張ったんだしさ。ここは俺がやるから」
    「でもそれじゃ悪い気がするわ」
    「じゃあパンの方を任せてもいいか? 粗熱が取れたら横に切れ目を入れてくれ」
     切った野菜とチーズを挟むからと言うと、サラは額に手を当てて了解! と答えた。トーマスが野菜を切り終えたところでサラは石窯からパンを取り出す。冷ましている間に彼女は大皿二つを準備して、切った野菜をトーマスが並べた。
    「余った野菜はどうするの?」
    「そうだな…他の野菜も入れてスープにしようか。多めに作ってハトコさん達にも食べてもらおう」
     鍋に野菜を入れて煮込んでいる間に、トーマスはフライパンでソーセージと卵を焼く。手際よく料理を作る彼の背中を眺めてにこにこと笑う。
    「トムの料理してるところ、惚れ惚れしちゃうなぁ〜」
    「……心の声がだだ漏れだけどいいのか?」
     彼女に背中を向けたままトーマスがそう言うと、サラはえへへと頬を染めてはにかんだ。
     ――サラを助けてから数日して東の国から出立する日に、トーマスは彼女から想いを打ち明けられてた。そして彼もサラに想いを告げて晴れて二人は恋人同士になった。かつて引っ込み思案な性格だった彼女は、こちらが気恥ずかしくなるような素直な気持ちを口に出す。
     どうしてなのかは考えるまでもなく、アビスゲートの扉の奥で彼女を変える何かがあったのだが、そんなこと聞けるわけもなく――
    (気持ちを話してくれるのは嬉しいが、いったい何を考えているのやら……)
     トーマスは複雑な気持ちを抱えるも顔には出さずフライパンを振る。上手に焼けた料理を皿に移して、できたぞとサラに声をかけると、こっちもいいわ! と彼女は切れ目を入れた丸パンを並べた。ぐつぐつと煮立った音のするスープからは美味しそうな匂いも立ち始めてきた。少し時間は早いが二人は食堂に料理を運んで、朝食をとることにした。
    「いただきまーす! まずはトムのおすすめからね!」
     サラはパンにトマトと玉ねぎそしてチーズを挟み、大きく口を開けてパンにかじりつく。
    「う〜ん……おいしー! トマトが甘くってジューシー!」
     サラは目をキラキラして二口目も頬張る。美味しそうに食べる彼女を見て、トーマスもかぶりついた。
    「うん…うまいな…チーズもパンに合ってるしいいな、これ」
    「ほんと、パンとの相性もいいわね」
     朝早く起きて作って良かったわとサラが言うと、トーマスも頷く。
    「そうだな。またこのパンが食べられて良かったよ」
     しみじみと呟いた言葉にトーマスはハッとする。あの日のことを思い出させてしまったかと不安になりサラを見ると、彼女は目をパチパチとさせた。
    「またって……ずっと待ってたの?」
     言ってくれたら良かったのにとサラは頬を染めて笑うも、表情が固いトーマスを見て笑うことを止めた。
    「……そうよね、言えるわけないよね」
     サラは食べかけのパンを皿に置き、姿勢を正して真正面に座るトーマスを見据える。急に真面目な顔をした彼女にトーマスもパンを置いた。
    「嫌なことを思い出すかもしれないと気にして、今まで言わなかったのよね?」
     そうだと頷くトーマスにサラは口角をあげた。
    「ありがとう、トム。でももう大丈夫。パンも美味しくできたし」
    「……無理してないか?」
    「本当に平気なのよ。それに私、こっちの世界に戻って来た時に決めたことがあるの。後悔しないで生きていきたいって。だからトムに気持ちを伝えたくなったのよ。まさか…同じ気持ちだって思ってなかったけど…」
     最後の方は声が小さくなり、サラは俯いてもじもじしてしまう。
     そしてトーマスはひとつため息をついてから話し出す。
    「そうだったのか……俺は、情けないことに今まで自分の気持ちに無頓着で、自覚したのがこの間だった。それがとても悔しくてたまらなくて、結果がどうなってもいいから伝えようと思ったんだ」
     サラに先を越されてしまったがなと言うと、彼女はふふっと笑う。
    「どっちが先だなんて関係ないわ。私、すごく嬉しかったもの」
     サラは自身の胸に手を置き、ぎゅっと固く握る。そしてもう片方の手はテーブルの上に無造作に置かれたトーマスの手に触れた。
    「でも私達…もう少し欲張りになってもいいのかもしれないね」
    「そうだな。もっと正直になっていいんだろうな」
     こちらの手に触れてきた彼女の手を、トーマスは優しくつつみこむように指をからめた。
    「好きだよ、サラ」
    「私も。大好きよ、トーマス」
     改めてお互いに気持ちを告白をした後、さすがに恥ずかしくなって二人は笑いだす。ひとしきり笑いあって、それから二人はまた朝食に手をつけたのでした。

    「ねぇねぇトム、前に約束したこと覚えてる?」
     朝食を再開して、サラは唐突に話を振った。
    「朝食を最高に幸せにする最後の条件のことだろ? 覚えているよ」
     なんのことかすぐわかったトーマスはそう答えると、サラはにっこりと笑う。
    「……教えてほしい?」
     まるでイタズラっ子のような口ぶりでサラが言うと、トーマスは顎に手を当て考え込んだが……
    「聞くのは止めておこうかな」
    「えっ いいの?」
    「俺も、サラの言うような条件を見つけたからな」
     それを聞いた彼女は目をキラキラさせる。教えて欲しいと顔に書いてあるようで、トーマスはそんなわかりやすい彼女をくすぐったく思った。
    「知りたいのか?」
    「もちろん! トムにもそういう条件があるなら聞きたい!」
    「仕方がないな…そこまで知りたいんだったら、じゃあお互いに教え合うか?」
    「いいわね、そうしましょう」
     朝食を最高の幸せにする条件、それは――

    「大好きな人と一緒にたべること」
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