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DONE姥包webオンリー様で展示してました。ミュ軸の話です。忘れていた昔の話と少しだけ前の最近の話「大包平」
障子に向かって囁く。大包平の部屋の前に山姥切国広は立っている。夜も随分と深く、本丸は静まり返っていて、寝ている仲間たちを起こしてはいけないから一番抑えた小さな声で呼んでみた。部屋の中で寝ていたらきっと気付かない声量。もう一度、呼ぶ。おおかねひら。
……静寂。
寝ているのか。……だよな。あと10秒待って返事がなかったら自分の部屋に戻ろう。数をかぞえる。じゅう……きゅう……はち……なな、……ろく。
障子が静かに引かれた。どうした、と大包平が顔を出す。よかった、起きていた。「来てくれ」と告げる。足早に、しかし足音はしない速さで歩き出す。後ろから大包平がついてくる気配がした。眠いと言って断られたらどうしようと思っていたが杞憂だった。太刀は夜目が効かないからついてこられる速度で歩かないといかない。大包平の手を掴んで歩き出した方がよほど早いと一瞬考えるもそんな子どもみたいな扱いは嫌がられるかもしれないと思うとできなかった。
3242障子に向かって囁く。大包平の部屋の前に山姥切国広は立っている。夜も随分と深く、本丸は静まり返っていて、寝ている仲間たちを起こしてはいけないから一番抑えた小さな声で呼んでみた。部屋の中で寝ていたらきっと気付かない声量。もう一度、呼ぶ。おおかねひら。
……静寂。
寝ているのか。……だよな。あと10秒待って返事がなかったら自分の部屋に戻ろう。数をかぞえる。じゅう……きゅう……はち……なな、……ろく。
障子が静かに引かれた。どうした、と大包平が顔を出す。よかった、起きていた。「来てくれ」と告げる。足早に、しかし足音はしない速さで歩き出す。後ろから大包平がついてくる気配がした。眠いと言って断られたらどうしようと思っていたが杞憂だった。太刀は夜目が効かないからついてこられる速度で歩かないといかない。大包平の手を掴んで歩き出した方がよほど早いと一瞬考えるもそんな子どもみたいな扱いは嫌がられるかもしれないと思うとできなかった。
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DONE姥包webオンリー様で展示してました。大包平しかでてきません。ある日の大包平が猫とネズミを見た話 テレビから音がしている。
正確には大型モニターに電源が入ったままになっており、そこに出力されている映像が過去のテレビジョン放映で、その音が出ていた。
本丸の大広間は60畳をゆうに超える広さで、所属している全刀剣男士の招集や皆が集っての宴会などに使用される。そこには大包平の背丈ほどある大型モニターも併設されていて、作戦会議の大地図を出力したり、過去の出陣の映像を自由に見ることができた。無論テレビも映る。
画像を走査、電送する「放映」というものが始まった来し方から今までのテレビジョン映像すべてがこのモニターに出力することができる。そして、今映っているのは200年前ほどの報道番組のようだった。おそらく、朝の。
2107正確には大型モニターに電源が入ったままになっており、そこに出力されている映像が過去のテレビジョン放映で、その音が出ていた。
本丸の大広間は60畳をゆうに超える広さで、所属している全刀剣男士の招集や皆が集っての宴会などに使用される。そこには大包平の背丈ほどある大型モニターも併設されていて、作戦会議の大地図を出力したり、過去の出陣の映像を自由に見ることができた。無論テレビも映る。
画像を走査、電送する「放映」というものが始まった来し方から今までのテレビジョン映像すべてがこのモニターに出力することができる。そして、今映っているのは200年前ほどの報道番組のようだった。おそらく、朝の。
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DONE山姥切国広と大包平の話。某本丸準拠。姥包WEBオンリー「花のかんばせ 茜さす君」(22/12/3~4)様にて展示していました。
申請差戻、要:破損事由 ああ、やったなと思った。
ふつと糸が切れるようにあたりには暗闇が落ちた。かのごとく、大包平は感じたが目の前を立ちふさがる山姥切国広は違うのだろう。太刀の目と打刀の目は異なる。薄い月明かりでは山姥切の纏う布がほのかに光って見えるだけの大包平とは違って、山姥切には闇に飲まれる廊下の先まで見渡せるに違いない。驚き引き攣った大包平の顔を含めて。
廊下の角からぬるりと現れた白い影に動揺して持っていた手燭は取り落としていた。そのせいであたりは真っ暗である。気配も足音もまったく察知できなかったので、すわ化生かなにかかと勘違いして肝を冷やした。しかし影をよく見ればそれは山姥切国広だった。動揺を悟られまいと落とした手燭を探すふりで視線を外す。ごまかすにも手遅れ――という気はしなくもない。
4658ふつと糸が切れるようにあたりには暗闇が落ちた。かのごとく、大包平は感じたが目の前を立ちふさがる山姥切国広は違うのだろう。太刀の目と打刀の目は異なる。薄い月明かりでは山姥切の纏う布がほのかに光って見えるだけの大包平とは違って、山姥切には闇に飲まれる廊下の先まで見渡せるに違いない。驚き引き攣った大包平の顔を含めて。
廊下の角からぬるりと現れた白い影に動揺して持っていた手燭は取り落としていた。そのせいであたりは真っ暗である。気配も足音もまったく察知できなかったので、すわ化生かなにかかと勘違いして肝を冷やした。しかし影をよく見ればそれは山姥切国広だった。動揺を悟られまいと落とした手燭を探すふりで視線を外す。ごまかすにも手遅れ――という気はしなくもない。