喫茶店フォレスタ　1-1『京子と家族』　体育のバスケットボールの時間。残り10秒をタイマーが示す。
「京子、頼たのんだよ」
「オッケー！ っ、ここかっ」
　パスを受け取った京子は、既すでにガードの堅かたい前方を見て、スリーポイントシュートを放つ。
　綺き麗れいな放物線を描えがいたボールは、静かにネットを揺ゆらした。
「うっそ、完かん璧ぺきすぎるだろ」
「さっすが京子！」
　男子と女子がそれにざわついていたところで、インターバルのブザーが鳴る。
「……っほんとお前、見た目も男子っぽいのに、勿もつ体たいねえわ」
　休きゆう憩けいしにコート外へ戻もどったところ、苦笑いで言うクラスメイトの男子に京子は、汗あせを拭ふいていたタオルを放り、急にその頬ほおをつねった。