百合菜
DONE有梓の「そうだ、カレーを作ろう!」2021年2月7日に開催された遙か7の天野七緒中心WEBオンリーで「エアスケブ」を書きました。
そのとき、幸村×七緒で「炊事をするふたり」というリクエストをいただいたのですが、有梓バージョンも浮かんだので勝手に書いてしまいました^^;
下宿に滞在中の梓。今日は管理人さんが不在ということで夕飯は自分たちで用意することに。
そこで有馬とカレーを作るが……「高塚、何か食べたいものがないか」
探索の途中に有馬が訪ねてきたのは秋の風が吹き始めた頃。
そういえば、梓は朝、管理人に言われたことを思い出す。
今日は用事があるため、夕食を用意できないことを。
「うーん」
梓は少し考え込む。そして思い出す。久しぶりにカレーが食べたいと。
夏の間は汗をかくため避けてきたが、そろそろあの辛さが懐かしくなってきた。
ただし、おそらく作るのは自分になるであろうが。
「カレーを食べたいです。有馬さん」
そう答えると、有馬も何やら思案しているようだった。
「カレーか……」
すると、次の瞬間、意外ともいうべき答えが返ってきた。
「カレーなら作ったことがある。一緒に作ろう」
「ええ!?」
「なんだ、その声は」
梓の態度が不満だったらしい。
有馬は不服そうに梓を見つめてくる。睨みつけてくるといった方が正しいのかもしれない。
「有馬さん、カレー、作ったことがあるのですか?」
「悪いか」
ちょっと不貞腐れたかのようにそう答える。
「いえ、意外過ぎて」
「軍人たるもの、いつ戦場に出るかわからない。そのため、料理のたしなみくらいはある」
そう言われて梓は納得する。
梓のいた世 2212
百合菜
PAST遙か6・有梓「恋心は雨にかき消されて」
2019年有馬誕生日創作。
私が遙か6にはまったのは、猛暑の2018年のため、創作ではいつも「暑い暑い」と言っている有馬と梓。
この年は気分を変えて雨を降らせてみることにしました。
おそらくタイトル詐欺の話。先ほどまでのうだるような暑さはどこへやら、浅草の空は気がつくと真っ黒な雲が浮かび上がっていた。
「雨が降りそうね」
横にいる千代がそう呟く。
そして、一歩後ろを歩いていた有馬も頷く。
「ああ、このままだと雨が降るかもしれない。今日の探索は切り上げよう」
その言葉に従い、梓と千代は足早に軍邸に戻る。
ドアを開け、建物の中に入った途端、大粒の雨が地面を叩きつける。
有馬の判断に感謝しながら、梓は靴を脱いだ。
「有馬さんはこのあと、どうされるのですか?」
「俺は両国橋付近の様子が気になるから、様子を見てくる」
「こんな雨の中ですか!?」
彼らしい答えに納得しつつも、やはり驚く。
普通の人なら外出を避ける天気。そこを自ら出向くのは軍人としての役目もあるのだろうが、おそらく有馬自身も責任感が強いことに由来するのだろう。
「もうすぐ市民が楽しみにしている催しがある。被害がないか確かめるのも大切な役目だ」
悪天候を気にする素振りも見せず、いつも通り感情が読み取りにくい表情で淡々と話す。
そう、これが有馬さん。黒龍の神子とはいえ、踏み入れられない・踏み入れさせてくれない領域。
自らの任 1947
百合菜
PAST遙か6・有梓「私は幸せだから」
こちらの世界にやってきた有馬と銀座を歩く梓。
そこでふとしたひと言とは……「寒くなってきましたね」
そう言いながら梓は隣を歩く有馬に話しかける。
銀座の街は銀杏の葉が金色に輝き、もうじき寒い冬がやってくることを伝えてくる。
ふたりでこうして一緒に歩いていると思い出す。
風景は違えど、帝都の銀座でこうして歩き、街を守っていた日々を。
しかし、あのときは自分たちだけではなく、千代や秋兵たちもいた。
「みんな、元気かな……」
思わずそんな言葉が口から出てしまう。
しまったと思ったときには遅かった。
隣にいる有馬が何か言いたげに梓のことを見つめてきた。
「ごめんなさい、そういうつもりでは……」
他意はない。
ただ、隣にいる人にこの言葉を向けると必要以上に責任を感じることは、少し考えればわかりそうなものなのに。
「すまない」
その言葉が指しているのが何であるか。はっきりとは伝えていないが、何であるか梓は理解した。
自分を守るために神子の力を使った。
そのために仲間たちとは別れの挨拶すらできなかった。
仕方がないとわかっているが、名残惜しい気持ちはどこかにある。
「一さんが謝る必要はないです」
こちらの世界とあちらの世界。どっちみち、どちらかを選ばない 820
百合菜
PAST遙か6・有梓「今日も帝都の空は澄んで」
有馬と出会って二度目の夏。
結婚を控えた梓。休憩中に空を見上げて、つい気負ってしまう。そんな梓に対し、有馬は……
Twitterに投稿した2020年有馬さん誕生日創作です。「今日も天気がいいですね」
「ああ」
一さんと出会ってから訪れる二度目の夏。
そして迎える二度目の一さんの誕生日。
右手の薬指にはめられた指輪が窓から差し込む光を反射し、壁に小さな虹を描く。少し前に一さんに渡された指輪。秘かに、こっそりと、でも周りにはバレバレな様子で待っていたプロポーズの言葉とともに。
来週、一さんと私は富山に行く。一さんのご実家に、結婚式を挙げるために。式の準備はほとんど終えており、あとは身一つで行くだけ。
去年の今頃には想像すらしていなかった今の状況がくすぐったくなることもある。
でも、これはきっと私たちがひとつずつ着実に絆を積み重ねてきた証なのだろう。そして、そこに至るまでたくさんの人たちの助力があったからこその関係。
「去年よりも空が澄んでいる気がしますね」
一さんは暑さなどものともせずコーヒーカップに口をつけ、飲み干す。それもホットのブラックコーヒーなところがなんだか一さんらしい。
「ああ、そうだな。龍神に見守られているような安心感があるな」
恵みの光をたたえる空。
いつまでも眺めたくなるような蒼。
穢されたくないと思わせるような透明感。
去年の今 1095