shima_2025haru
塗鴉皇宗SS/怖がりで小さな生き物 今日の仕入れはいつもよりスムーズに終わった。ものもかなり質の良いものが手に入り、新鮮な魚や肉を早いところ冷蔵庫にしまいたかったので、いつもの出勤時間まではかなり間があったがそのままウィズダムに向かうことにした。
裏口から店に入ると、バックヤードの灯りはすでに点いていて、宗雲がソファーで作業をしている後ろ姿が見えた。いやに早い、と意外に思いつつ、早く来てよかった、とも思う。黙って近づいていくさなか、視界に入った宗雲の手は、いつもであればパソコンや書類を忙しく繰っているのに、今は仕事をしているわけではなさそうだった。二つの掌は伏せられたノートパソコンの蓋に置かれて、皇紀でなければわからない程度に小さく震えている。皇紀は訝しみながら、自分に気づく様子のない彼の横顔を覗き込んだ。緑の瞳はノートパソコンの向こう、何もない机上をじっと見つめ、色の希薄な唇はぐっと噛み締められている。皇紀は訝しむよりは胸のざわめきに背を押されるように、彼のすぐ隣までずかずかと近づいた。
3628裏口から店に入ると、バックヤードの灯りはすでに点いていて、宗雲がソファーで作業をしている後ろ姿が見えた。いやに早い、と意外に思いつつ、早く来てよかった、とも思う。黙って近づいていくさなか、視界に入った宗雲の手は、いつもであればパソコンや書類を忙しく繰っているのに、今は仕事をしているわけではなさそうだった。二つの掌は伏せられたノートパソコンの蓋に置かれて、皇紀でなければわからない程度に小さく震えている。皇紀は訝しみながら、自分に気づく様子のない彼の横顔を覗き込んだ。緑の瞳はノートパソコンの向こう、何もない机上をじっと見つめ、色の希薄な唇はぐっと噛み締められている。皇紀は訝しむよりは胸のざわめきに背を押されるように、彼のすぐ隣までずかずかと近づいた。
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塗鴉桃源郷、本当に食らいすぎてまだ全く読み返せていないのですが、消化しないことには前に進めないので泣きながらしたためました。あなたの生からもう何一つ奪われることのないように。皇宗SS/きみの世界は輝いているか/イベスト後 ウィズダムに戻った皇紀は颯といっしょに宗雲への報告を終えるなり、ソファーに沈むように腰掛けた。今日程度の戦いは今までにもあったというのに、なぜだかとてつもなく消耗している。頭の中に住み着いた宗雲が「気持ちが疲れているんだ」と言った。あながち間違ってもいないような気がした。
細く息を吐きながら、早速元気に働き始める颯の背中を眺めていると、バックヤードで上へ連絡を繋げていたらしい現実の宗雲が皇紀のほうに歩み寄ってくる。
「随分お疲れのようだ」
今日は休むか、と聞いてきたので、首を横に振る。意地のようなものだった。宗雲はそれ以上は気遣いを押し付けず、皇紀の隣に腰を下ろす。
「願いの叶う桃源郷、か」
「……あ?」
3476細く息を吐きながら、早速元気に働き始める颯の背中を眺めていると、バックヤードで上へ連絡を繋げていたらしい現実の宗雲が皇紀のほうに歩み寄ってくる。
「随分お疲れのようだ」
今日は休むか、と聞いてきたので、首を横に振る。意地のようなものだった。宗雲はそれ以上は気遣いを押し付けず、皇紀の隣に腰を下ろす。
「願いの叶う桃源郷、か」
「……あ?」