hashi22202
DOODLE二人旅、孤児を保護するトラキア王と召喚師の話(弊アスクでは召喚師がトラキア王を「王様」と呼んでいます)
#秋のトラキア王強化期間
子どもがいる。
王様にそう言われて、僕は顔をあげた。山の日は野よりもはやく暮れる。影の落ち始めた森に視線をまよわす僕に、ほらあそこだと王様が指をさした。言われてみれば木立の向こう、小さな影がふたつ見える。子どもかどうかはわからないけど、まあそれらしくも見えなくない。よく見えたな、と、僕は素直に驚いた。十二聖戦士の血を引く人は、こういうところでちょっと人間離れしている。まして直系、聖痕持ちとくれば。
しばらくまえにこの辺りで、村が野盗に襲われた。特務機関は慌てて救援に向かったけども、それ以来子どもがふたり、行方不明になっていた。野盗に攫われたのか、それとも逃げ惑ううちに、迷って帰れなくなってしまったのか。どっちなのかは知らないけども、おいおい聞けばいいだろう。もしかしたら、全く違う子なのかもしれないけど。とにかく助けることが先決だと、僕は王様とふたりで木立の間を縫っていった。先日の襲撃以来、村近くの見回りを強化していたわけだけども、それがひょんな結果となったわけだ。運がいい、と僕は思った。もし彼らが行方不明になった子どもなら、相当衰弱しているはずである。正直、生きているだけでも奇跡というものだ。
2903王様にそう言われて、僕は顔をあげた。山の日は野よりもはやく暮れる。影の落ち始めた森に視線をまよわす僕に、ほらあそこだと王様が指をさした。言われてみれば木立の向こう、小さな影がふたつ見える。子どもかどうかはわからないけど、まあそれらしくも見えなくない。よく見えたな、と、僕は素直に驚いた。十二聖戦士の血を引く人は、こういうところでちょっと人間離れしている。まして直系、聖痕持ちとくれば。
しばらくまえにこの辺りで、村が野盗に襲われた。特務機関は慌てて救援に向かったけども、それ以来子どもがふたり、行方不明になっていた。野盗に攫われたのか、それとも逃げ惑ううちに、迷って帰れなくなってしまったのか。どっちなのかは知らないけども、おいおい聞けばいいだろう。もしかしたら、全く違う子なのかもしれないけど。とにかく助けることが先決だと、僕は王様とふたりで木立の間を縫っていった。先日の襲撃以来、村近くの見回りを強化していたわけだけども、それがひょんな結果となったわけだ。運がいい、と僕は思った。もし彼らが行方不明になった子どもなら、相当衰弱しているはずである。正直、生きているだけでも奇跡というものだ。
hashi22202
DOODLE娘の初陣に武器を渡すトラキア王の話(若干暗いです)
#秋のトラキア王強化期間
娘が、十八になった。
それをひとつの節目とすることを、トラバントは決めていた。いずれ、避けられないことである。だからトラバントは、血を吐く思いでその日を決めた。それでも、どれほどこの日が来てくれるなと、祈ったことかしれない。それでもその日はやってきた。すなわち、初めて娘が、戦場に出る日が。
任務そのものは、山賊の討伐という他愛もないものである。もしものために、信用のできる部下もつけた。だからまず、そういうことはないだろう。しかし結局それが、一度これを済ませればいいというようなのものではなく、今後娘が戦場で過ごすその一歩でしかないこと、そうして今は甘いものである戦場が、いずれどんどん厳しく、責任の重い、生き延びることの難しいものへと変わって行くことを、むろんトラバントは知っていた。
3302それをひとつの節目とすることを、トラバントは決めていた。いずれ、避けられないことである。だからトラバントは、血を吐く思いでその日を決めた。それでも、どれほどこの日が来てくれるなと、祈ったことかしれない。それでもその日はやってきた。すなわち、初めて娘が、戦場に出る日が。
任務そのものは、山賊の討伐という他愛もないものである。もしものために、信用のできる部下もつけた。だからまず、そういうことはないだろう。しかし結局それが、一度これを済ませればいいというようなのものではなく、今後娘が戦場で過ごすその一歩でしかないこと、そうして今は甘いものである戦場が、いずれどんどん厳しく、責任の重い、生き延びることの難しいものへと変わって行くことを、むろんトラバントは知っていた。