娘が、十八になった。
それをひとつの節目とすることを、トラバントは決めていた。いずれ、避けられないことである。だからトラバントは、血を吐く思いでその日を決めた。それでも、どれほどこの日が来てくれるなと、祈ったことかしれない。それでもその日はやってきた。すなわち、初めて娘が、戦場に出る日が。
任務そのものは、山賊の討伐という他愛もないものである。もしものために、信用のできる部下もつけた。だからまず、そういうことはないだろう。しかし結局それが、一度これを済ませればいいというようなのものではなく、今後娘が戦場で過ごすその一歩でしかないこと、そうして今は甘いものである戦場が、いずれどんどん厳しく、責任の重い、生き延びることの難しいものへと変わって行くことを、むろんトラバントは知っていた。
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