konkon12165
DOODLE月見をする三十路の雄炎月見「あぁ、今夜もいい月だ。こういう晩は酒が格別に美味い」
そう言いながら白雄は盃に唇をつけて傾けるが、紺碧の双眸は空に浮かぶ月などちっとも見ていなかった。ゆるりと穏やかに細められた紺碧の眼差しは、しかと紅炎を映しているので紅炎は口をつけようとしていた盃を遠ざけ、その眼差しから逃げるように瞼を伏せる。手に持った盃の揺れる水面を見ると月が映ってゆらめいていた。白雄ときたら紅炎の双眸が光の加減で金にも琥珀にも見える色合いなので、時折こうして月に見立てて恥ずかしげもなく褒め称える時があるのだ。
白雄はいつまで経ってもこういう褒め言葉に慣れることなく、自分の前でだけは奥ゆかしく恥じらう紅炎を見て笑みを深める。その比類なき強さや忠義心の厚さを褒められることは多々あれど、白雄のような褒め方をする人間など他にいないので慣れないのもあるだろう。まぁ、他に居たとしたら紅炎の側には置いていけないのだが。
2606そう言いながら白雄は盃に唇をつけて傾けるが、紺碧の双眸は空に浮かぶ月などちっとも見ていなかった。ゆるりと穏やかに細められた紺碧の眼差しは、しかと紅炎を映しているので紅炎は口をつけようとしていた盃を遠ざけ、その眼差しから逃げるように瞼を伏せる。手に持った盃の揺れる水面を見ると月が映ってゆらめいていた。白雄ときたら紅炎の双眸が光の加減で金にも琥珀にも見える色合いなので、時折こうして月に見立てて恥ずかしげもなく褒め称える時があるのだ。
白雄はいつまで経ってもこういう褒め言葉に慣れることなく、自分の前でだけは奥ゆかしく恥じらう紅炎を見て笑みを深める。その比類なき強さや忠義心の厚さを褒められることは多々あれど、白雄のような褒め方をする人間など他にいないので慣れないのもあるだろう。まぁ、他に居たとしたら紅炎の側には置いていけないのだが。
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DOODLE躑躅と雄炎の短い話私の躑躅躑躅 4月上旬 燃え上がる想い 恋の喜び
もういいかーい。遠くから幼い弟の高く澄んだ声が聞こえる。まだ探し始めるには早いが、幼さ故に探すのを待ちきれなかったのだろう。
紅炎はふと口元を緩め、燃えるような赤色の花をたわわに咲かせた躑躅の影に屈んで隠れながら弟に見つかるのを待っていた。紅炎を見つけたら何でもひとつ言うことを聞くと約束したので、紅覇は隠れ鬼を始める前から大興奮だった。最近は何かと忙しく構ってやれていなかったので、今日は朝から紅明共々遊びに付き合っているが、たまにはこんな穏やかな1日もよいものだ。
春の風は満開の花々の香りを乗せてどこか甘く、晴天の青空を見ていると気分がよくなる。外で過ごすには最高の日だ。紅明は書庫から出たがらず無理矢理引きずってきたが、外に出してよかった。あれも兄になったので、弟のことを考えて書庫に帰ったりはしないだろう。炎兄、明兄どこー?という紅覇の声がまだ遠いので見つかるまで多少時間がかかりそうだ。服はもう既に汚れているのだし、いいかと思って膝を抱え直接地面に座る。赤い躑躅に埋もれるように隠れながら、誰も見ていないのをいいことに指先でひとつ花をつむと口に咥えた。花の蜜の甘い味が広がる。咥えた花を揺らしていると、唐突に近くで声が聞こえて驚きのあまり咄嗟に跳ねそうになった体を押し留める。
3811もういいかーい。遠くから幼い弟の高く澄んだ声が聞こえる。まだ探し始めるには早いが、幼さ故に探すのを待ちきれなかったのだろう。
紅炎はふと口元を緩め、燃えるような赤色の花をたわわに咲かせた躑躅の影に屈んで隠れながら弟に見つかるのを待っていた。紅炎を見つけたら何でもひとつ言うことを聞くと約束したので、紅覇は隠れ鬼を始める前から大興奮だった。最近は何かと忙しく構ってやれていなかったので、今日は朝から紅明共々遊びに付き合っているが、たまにはこんな穏やかな1日もよいものだ。
春の風は満開の花々の香りを乗せてどこか甘く、晴天の青空を見ていると気分がよくなる。外で過ごすには最高の日だ。紅明は書庫から出たがらず無理矢理引きずってきたが、外に出してよかった。あれも兄になったので、弟のことを考えて書庫に帰ったりはしないだろう。炎兄、明兄どこー?という紅覇の声がまだ遠いので見つかるまで多少時間がかかりそうだ。服はもう既に汚れているのだし、いいかと思って膝を抱え直接地面に座る。赤い躑躅に埋もれるように隠れながら、誰も見ていないのをいいことに指先でひとつ花をつむと口に咥えた。花の蜜の甘い味が広がる。咥えた花を揺らしていると、唐突に近くで声が聞こえて驚きのあまり咄嗟に跳ねそうになった体を押し留める。