ぎんまる
DONEHades週間お題「覚えていない」ザグタナ(ザグ)の小話です。捏造設定があります。Eclosionあっと思った時にはもう遅かった。白く煙る川岸へ寄りすぎていたのだ。柱にぶつかってバランスを崩し、露を含んだ草に足を取られた。重力に従って身体が傾ぎ、派手な音と共に飛沫が上がる。
この水を飲んではいけない。知っていたのに、衝撃で口から、肺から空気が抜け、代わりに冷たい水が入り込んでくる。
もがく間も無くたちまち意識に霞がかかり、何もわからなくなった。
大切な用事があった気がするのに思い出せない。
どこへ行くつもりだったのか。ここはどこで、自分は誰なのか。
なんだかふわふわと浮くように身体が軽い。
いや、実際に浮いているのかもしれない。
キラキラと輝く視界に芳しい花の香りが漂い、爽やかな風が翅を撫でていく。
3980この水を飲んではいけない。知っていたのに、衝撃で口から、肺から空気が抜け、代わりに冷たい水が入り込んでくる。
もがく間も無くたちまち意識に霞がかかり、何もわからなくなった。
大切な用事があった気がするのに思い出せない。
どこへ行くつもりだったのか。ここはどこで、自分は誰なのか。
なんだかふわふわと浮くように身体が軽い。
いや、実際に浮いているのかもしれない。
キラキラと輝く視界に芳しい花の香りが漂い、爽やかな風が翅を撫でていく。
ぎんまる
DONEHadesWeeklyのお題に合わせて書いたザグタナザグ小話です。初穂「タナトス!来てくれ!」
小さな獣の鳴き声と共に届く若々しい男の呼び声。
ちょうど方々で集めた死者の魂達をカロンへ引き渡したところだった。はっと顔を上げた死神へ、冥府の渡守は低く唸る。そこに揶揄いの色を感じてタナトスは兄神を睨め付けた。
「今日の分はこれで最後だ」
さらば、と言い終わりもしないうちに輝く翼を広げ、死神は呼び声の元へ馳せる。
高らかな弔鐘と共に再び顕現した死の神は、巨きく壮麗な門扉の前に浮かんでいた。人気のない静かな木立の中に立つ、地下の神々へ奉じられたステュクス神殿。ならば今から相対するのはかの冥王ハデスであろう。
唇を引き結び、大鎌を構えて振り向く。しかしその先にいたのは冥王ではなかった。
2415小さな獣の鳴き声と共に届く若々しい男の呼び声。
ちょうど方々で集めた死者の魂達をカロンへ引き渡したところだった。はっと顔を上げた死神へ、冥府の渡守は低く唸る。そこに揶揄いの色を感じてタナトスは兄神を睨め付けた。
「今日の分はこれで最後だ」
さらば、と言い終わりもしないうちに輝く翼を広げ、死神は呼び声の元へ馳せる。
高らかな弔鐘と共に再び顕現した死の神は、巨きく壮麗な門扉の前に浮かんでいた。人気のない静かな木立の中に立つ、地下の神々へ奉じられたステュクス神殿。ならば今から相対するのはかの冥王ハデスであろう。
唇を引き結び、大鎌を構えて振り向く。しかしその先にいたのは冥王ではなかった。