浬-かいり-
DOODLEかのみさ夏の残骸に蓋 放課後。外に出てみれば、少し冷たい風が頬を掠めた。すっかり秋一色の外は肌寒い。そろそろマフラーやコートを出さなくちゃいけないかも。
学校の敷地内に生えている木の葉は、どれも黄色やオレンジなど鮮やかな色に変わっていて、風が吹くたびに数枚がひらひらと地面に落ちた。
夏休みがとっくに終わってしまった空の日は短く、既に日は傾き始めていた。夕日に照らされながら、耳には部活動に勤しむ声が届く。ただその声は夏休み前よりも勢いが無いように感じて——すぐにそれが、どこの部活も三年生の引退があったからだと思い当たった。
今日のテニス部の活動は無し。一人で歩き、やがて花壇の前で足を止めた。俯いた視線の先には、すっかり枯れてしまったひまわりが同じように俯いている。
2983学校の敷地内に生えている木の葉は、どれも黄色やオレンジなど鮮やかな色に変わっていて、風が吹くたびに数枚がひらひらと地面に落ちた。
夏休みがとっくに終わってしまった空の日は短く、既に日は傾き始めていた。夕日に照らされながら、耳には部活動に勤しむ声が届く。ただその声は夏休み前よりも勢いが無いように感じて——すぐにそれが、どこの部活も三年生の引退があったからだと思い当たった。
今日のテニス部の活動は無し。一人で歩き、やがて花壇の前で足を止めた。俯いた視線の先には、すっかり枯れてしまったひまわりが同じように俯いている。
浬-かいり-
DOODLEかのみさ※モブ視点教師パロ
教科書は教えてくれない「どう? 解けた?」
「ううん……。分かんないよ先生、こんなの当て嵌まるところ無くない?」
机に広げたプリントの上に突っ伏せば、腕が当たってシャーペンが床に落ちた。頭がパンクしそうで、それを拾う気力も無い。
「ちゃんと教科書見てみなって。3行目から5行目」
苦笑いする先生が、シャーペンを拾ってくれる。私は項垂れた姿勢のままそれを受け取って、彼女の顔を見上げた。
奥沢先生は、現代文を担当する私のクラスの担任だ。見たところまだ若そうだけど、しっかりしていて話も親身に聞いてくれて頼り甲斐があって、生徒からも慕われている先生だ。
国語が壊滅的に苦手な私の為に、こうして一人きりの補習を開いてくれる。私もまた、先生を慕っている一人の生徒だった。
2775「ううん……。分かんないよ先生、こんなの当て嵌まるところ無くない?」
机に広げたプリントの上に突っ伏せば、腕が当たってシャーペンが床に落ちた。頭がパンクしそうで、それを拾う気力も無い。
「ちゃんと教科書見てみなって。3行目から5行目」
苦笑いする先生が、シャーペンを拾ってくれる。私は項垂れた姿勢のままそれを受け取って、彼女の顔を見上げた。
奥沢先生は、現代文を担当する私のクラスの担任だ。見たところまだ若そうだけど、しっかりしていて話も親身に聞いてくれて頼り甲斐があって、生徒からも慕われている先生だ。
国語が壊滅的に苦手な私の為に、こうして一人きりの補習を開いてくれる。私もまた、先生を慕っている一人の生徒だった。
浬-かいり-
DOODLEかのみさ(みさかのん)「リナリアを踏む」(https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=15658988)の花音さん視点の話。
ヒマワリを咲かせる「美咲ちゃん、さっきの子って知り合い?」
「さっきの子?」
初めてのハコでライブを終えて、その打ち上げ。ライブの話で盛り上がるこころちゃん達を落ち着かせながらメニューを注文して一息ついた頃、隣に座る美咲ちゃんに声を掛けた。
彼女は不思議そうな顔をしたけれど、先程ライブハウスを出る時に声を掛けてきたスタッフの子だと説明すれば、納得いったように頷いた。
「ライブ前にちょっとだけ話をしたんです。ミッシェルに興味があったみたいで」
「そうなんだ」
美咲ちゃんはそう説明したけれど。あの時私が見たあの子の顔と視線は、ただの好意や興味じゃないように感じた。
テーブルの下にある美咲ちゃんの右手を見つけると、きゅっと手を握る。少しだけ顔を赤らめた彼女が、驚いたように此方を見て小声で私を呼ぶ。
1811「さっきの子?」
初めてのハコでライブを終えて、その打ち上げ。ライブの話で盛り上がるこころちゃん達を落ち着かせながらメニューを注文して一息ついた頃、隣に座る美咲ちゃんに声を掛けた。
彼女は不思議そうな顔をしたけれど、先程ライブハウスを出る時に声を掛けてきたスタッフの子だと説明すれば、納得いったように頷いた。
「ライブ前にちょっとだけ話をしたんです。ミッシェルに興味があったみたいで」
「そうなんだ」
美咲ちゃんはそう説明したけれど。あの時私が見たあの子の顔と視線は、ただの好意や興味じゃないように感じた。
テーブルの下にある美咲ちゃんの右手を見つけると、きゅっと手を握る。少しだけ顔を赤らめた彼女が、驚いたように此方を見て小声で私を呼ぶ。
浬-かいり-
DOODLEかのみさ勇気がないなら 何度ライブの回数を重ねても、直前の緊張感にはやっぱり慣れることがなくて、いつも心臓がドキドキしてしまう。
こころちゃんやはぐみちゃん、薫さんの三人はそんな緊張感さえも楽しい“ドキドキ”に変わってしまうようで、先程からはしゃいでいる。
私は鏡の前で着替えたステージ衣装の最終チェックを行うと、そっと控室から出て行った。
向かう先は、美咲ちゃんの控室。彼女はもう、ミッシェルに着替えているだろうか。
「美咲ちゃん、準備できた?」
ドアをノックして呼ぶが、返事は無い。
首を傾げてから一言断りを入れて、ゆっくりとドアを開けた。
「失礼します……?」
控室の中に入っても反応はない。けどその理由はすぐに分かった。
2709こころちゃんやはぐみちゃん、薫さんの三人はそんな緊張感さえも楽しい“ドキドキ”に変わってしまうようで、先程からはしゃいでいる。
私は鏡の前で着替えたステージ衣装の最終チェックを行うと、そっと控室から出て行った。
向かう先は、美咲ちゃんの控室。彼女はもう、ミッシェルに着替えているだろうか。
「美咲ちゃん、準備できた?」
ドアをノックして呼ぶが、返事は無い。
首を傾げてから一言断りを入れて、ゆっくりとドアを開けた。
「失礼します……?」
控室の中に入っても反応はない。けどその理由はすぐに分かった。
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DOODLEかのみさ花弁は愛の証 “それ”に最初に気付いたのは、花音のクラスメイトであり親友でもある白鷺千聖であった。
5限目の体育に備え更衣室で着替えていた彼女は、同じく隣で制服を脱ぐ花音が視界に入った時に、それに気付いてしまった。
それは、花音の首筋にある痕であった。
鬱血痕のようなピンク色のそれは、白い肌の中だとよく目立って見えた。
「花音、首のそれ、」
思わず指摘してから、しまったと千聖は後悔した。
虫刺されにしては時期が早過ぎるそれだったが、なんならいっそ虫刺されと言い張ってくれた方が平和に終わると。それか寧ろ、何を指摘されたのか気付かずにいて欲しいと。自分で聞いておいて、そんな願望めいた思いを花音に向けた。
「……ああ、これ?」
21425限目の体育に備え更衣室で着替えていた彼女は、同じく隣で制服を脱ぐ花音が視界に入った時に、それに気付いてしまった。
それは、花音の首筋にある痕であった。
鬱血痕のようなピンク色のそれは、白い肌の中だとよく目立って見えた。
「花音、首のそれ、」
思わず指摘してから、しまったと千聖は後悔した。
虫刺されにしては時期が早過ぎるそれだったが、なんならいっそ虫刺されと言い張ってくれた方が平和に終わると。それか寧ろ、何を指摘されたのか気付かずにいて欲しいと。自分で聞いておいて、そんな願望めいた思いを花音に向けた。
「……ああ、これ?」
浬-かいり-
DOODLEかのみさ本当はもう終わりにしたい チャペルの中は静まり返っていて、パイプオルガンの音が厳かな雰囲気を作り上げる。
カメラマンが構えるカメラも、スマホを構える参列したゲストも、みんなが入り口の大きな扉に注目していた。
扉が開く。一斉に押されるシャッターの音が鬱陶しい。
一歩、一歩。新婦が歩んでくる。一番通路側の席からは、新婦の顔がよく見えた。
「かのちゃん先輩!みーくん、すっごく綺麗だね」
隣のはぐみちゃんが耳打ちしてくる。
美咲ちゃん。
真っ白なドレスを纏う彼女の顔は緊張していて、恥ずかしそうで、でも幸せそうだった。
慣れないドレスに慎重に歩いてくる美咲ちゃんが、私の目の前の通路にやって来る。
距離にして1メートルにも満たない。手を伸ばせば、その手を掴むのは容易だった。
867カメラマンが構えるカメラも、スマホを構える参列したゲストも、みんなが入り口の大きな扉に注目していた。
扉が開く。一斉に押されるシャッターの音が鬱陶しい。
一歩、一歩。新婦が歩んでくる。一番通路側の席からは、新婦の顔がよく見えた。
「かのちゃん先輩!みーくん、すっごく綺麗だね」
隣のはぐみちゃんが耳打ちしてくる。
美咲ちゃん。
真っ白なドレスを纏う彼女の顔は緊張していて、恥ずかしそうで、でも幸せそうだった。
慣れないドレスに慎重に歩いてくる美咲ちゃんが、私の目の前の通路にやって来る。
距離にして1メートルにも満たない。手を伸ばせば、その手を掴むのは容易だった。