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    浬-かいり-

    @Kairi_HLSY

    ガルパ⇒ハロハピの愛され末っ子な奥沢が好き。奥沢右固定。主食はかおみさ。
    プロセカ⇒今のところみずえなだけの予定。

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    かのみさ

    #ガルパ
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    #みさかのん
    #かのみさ
    emperor

    花弁は愛の証 “それ”に最初に気付いたのは、花音のクラスメイトであり親友でもある白鷺千聖であった。
     5限目の体育に備え更衣室で着替えていた彼女は、同じく隣で制服を脱ぐ花音が視界に入った時に、それに気付いてしまった。

     それは、花音の首筋にある痕であった。
     鬱血痕のようなピンク色のそれは、白い肌の中だとよく目立って見えた。


    「花音、首のそれ、」


     思わず指摘してから、しまったと千聖は後悔した。
     虫刺されにしては時期が早過ぎるそれだったが、なんならいっそ虫刺されと言い張ってくれた方が平和に終わると。それか寧ろ、何を指摘されたのか気付かずにいて欲しいと。自分で聞いておいて、そんな願望めいた思いを花音に向けた。


    「……ああ、これ?」


     けれど花音は、そんな千聖の思いを裏切るかのように、とんと自分の首筋を指した。
     あまり焦っている様子が見られないので、千聖が想像している類のものではないのではないか。一瞬だけ、そんな期待をした。


    「……美咲ちゃんがね、つけてくれたんだ」


     一瞬で砕かれる期待。花音の返事で千聖は確信する。それはキスマークであると。
     ただそれを認める花音の表情は、羞恥や焦りが一切見られなかったので違和感を覚える。
     せめて隠した方がいいとも思ったが、千聖に見られ指摘されたことに対しての反応は何も無かった為、……これは、確信犯だと結論づけることにした。花音は、見える位置にあると分かってて隠していないと。
     柔らかく笑う花音の表情が、まるで慈しむような、そんな慈愛に満ちた表情であったから。千聖はそれ以上、何も言えなかった。





    「えっ!? 花音さん、痕見えてますよ!?」


     その日の放課後のバンド練習。ミッシェルへの着替えを花音に手伝ってもらっていた美咲は、花音の首筋に気付くと慌てた声を上げた。
     控えめに咲くキスマークは確かに美咲自身が昨夜付けたもので間違いはなかった。けれど明るい所で見ると思ったよりもよく見えてしまっていたことと、花音がそれを隠す気が無かったので慌てふためく。
     対する花音はそんな美咲の様子を見ても表情一つ崩さない。


    「うん。千聖ちゃんにも言われちゃった」

    「見られたんですか!? 白鷺先輩に!?」


     よりによって、と美咲は頭を抱えた。
     花音は美咲の頰に手を添える。たったそれだけなのに、美咲はびくりと肩を震わせて一歩後ろへ下がった。追撃するように、花音も一歩前へ出て美咲を壁へ追い詰める。


    「ふふ、千聖ちゃんすごくびっくりしてたなぁ」


     まるで美咲を責めるような口調。
     顔を真っ赤にしてぱくぱくと口を開け、何も言い返せないでいる美咲の黒髪を梳いて、耳へと唇を寄せる。同じように真っ赤なそこへ、


    「ね、美咲ちゃん」


     と囁いた。


    「だ、だって、それは、花音さんが、」

    「……私が?」


     震える声の美咲が、やっとのことで反論を絞り出す。けれどその顔は羞恥に染まり、花音の服の裾を握り締める手は僅かに震えている。
     そんな様子が可愛らしいと思った花音は、首を傾げて続きの言葉を促した。


    「…………花音さんが、付けてって言った、から……」


     美咲にとって、精一杯の必死の抗議だった。
     昨夜、花音が付けて欲しいとあんまり強請るものだから、羞恥を抑え戸惑いながらも付けたのに。なんでこんな言われ方をされなくちゃいけないんだ。ぐるぐる考える美咲の思考はショートしそうで、ブルーグレーの瞳はゆらゆらと揺れていた。

     その姿が、また花音の加虐心を煽る。
     花音は美咲の肩を掴むと、くるりと身体の向きを変えさせた。大人しくされるがままとなった美咲は、花音に背中を向けた体勢となり壁に押し付けられる。美咲の頭の中で、警報が鳴り出した。


    「う、」

    「……ね、美咲ちゃんのクラスも、今日体育あったでしょ。どうしたの?」


     マメのある長い指が、美咲の背中をゆっくりとなぞった。吐息を漏らす彼女に、満足げに笑みを漏らす。


    「……け、見学にした」

    「そうなの?」

    「だって……っ!」


     文句が飛び出す前に、黒のタンクトップを首元まで捲り上げる。
     露わになった白い背中には、赤い痕がいくつも、点々と散っていた。花音の首筋とは比べ物にならない量のそれは、まるで花弁のように花音の愛を象徴している。


    「そうだよね。これじゃ、服は脱げないよね」

    「……っ、」


     痕の一つを花音が指で突いて、ぺろりと舐める。指を下へ滑らせて腰へ到達すれば、歯型のような痕もまだくっきりと残っていた。


    「まあ、昨日はちょっとやり過ぎちゃったよね。ごめんね」


     タンクトップを元に戻し、未だに真っ赤な頰に優しくキスを贈った。申し訳なさを全然感じない微笑みのまま、てきぱきと着ぐるみを美咲に着せていく。


    「こころちゃん達が待ってるから、先に行ってるね」


     小さく手を振って、花音は先に控室から出て行った。首筋は隠していないまま。
     その背中を覗き穴から見送りながら、美咲はぶんぶんと首を振る。
     まだ練習は始まってもいないのに、着ぐるみの中は熱気に包まれていた。
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