drsakosako
TRAINING理由現パロのタル鍾 タル先生と少年鍾離
眩い稲妻を含んだ雨雲がすう、と消えると、木の葉の表面や古びた屋根に溜まった夕立の名残が雫となって泥濘に次々と落ちていく。街の喧騒からも程遠く、テレビやラジオもない家の中には、その音が殊更によく響いた。一つの風だけでがたがたと音を鳴らす家にとっては大きすぎる音に、タルタリヤはぼんやりと天井を見上げる。
「雨漏りとか……」
「心配ない。今までに一度でもあったか」
「ない……」
確かに、一度とてない。雨漏りを直した事どころか、悪くなった立て付けを正した事もないし、軋む戸に油を注した事もない。外観も内装も古びてはいるが、傷んだ箇所が気にならない程に手厚く直されているらしかった。らしい、と言うのは、タルタリヤがその場面を見た事がないからだ。
919「雨漏りとか……」
「心配ない。今までに一度でもあったか」
「ない……」
確かに、一度とてない。雨漏りを直した事どころか、悪くなった立て付けを正した事もないし、軋む戸に油を注した事もない。外観も内装も古びてはいるが、傷んだ箇所が気にならない程に手厚く直されているらしかった。らしい、と言うのは、タルタリヤがその場面を見た事がないからだ。
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TRAININGリクまろ:タル先生×鍾生徒 夏休みにお出かけ現パロのタル(現教師)×鍾(子供)
古民家の軒先に轟々と降り注ぐ雨は、雨樋を溢れさせ、夏の日差しで乾いていたはずの土を瞬く間に泥濘に変えてしまう。そんな雨を乗せて縦横無尽にざわめく風は、庭木を横倒しにしかねない程にたわませ、古民家を成す材木全てを軋ませている。
山の天気は変わりやすいなどと言うが、ここまでとは思わなかった。外と部屋を隔てる頼りないガラス一枚ががたがたと揺れる音を聞きながら、タルタリヤは灰色に濁った空を見上げる。今でこそ山頂を覆う雲は雨風を運ぶばかりだが、そのうち雷鳴でも孕みかねない様子だ。
「音が、気になるか」
古びた、しかし目の隙までよく掃除された畳の上に座り、ぼうっと空を見上げていたタルタリヤの横に、二つ湯飲みを乗せた盆を持った十代半ばの少年がそっと座る。きっちりと首元までボタンが留められた古めかしい学生服に身を包む彼の年齢は、およそ衣服でしか計る事が出来ない。年代物の卓袱台に置かれた盆から湯飲みを手ずから差し出されたタルタリヤは、それを受け取り微笑んだ。
4958山の天気は変わりやすいなどと言うが、ここまでとは思わなかった。外と部屋を隔てる頼りないガラス一枚ががたがたと揺れる音を聞きながら、タルタリヤは灰色に濁った空を見上げる。今でこそ山頂を覆う雲は雨風を運ぶばかりだが、そのうち雷鳴でも孕みかねない様子だ。
「音が、気になるか」
古びた、しかし目の隙までよく掃除された畳の上に座り、ぼうっと空を見上げていたタルタリヤの横に、二つ湯飲みを乗せた盆を持った十代半ばの少年がそっと座る。きっちりと首元までボタンが留められた古めかしい学生服に身を包む彼の年齢は、およそ衣服でしか計る事が出来ない。年代物の卓袱台に置かれた盆から湯飲みを手ずから差し出されたタルタリヤは、それを受け取り微笑んだ。