志筑志鶴
MOURNINGデフアロ 初書きどうしてこうなったんだ。
心の中でひっそりと溜め息をついたのが実際にも出ていたらしい。そろそろ店仕舞いの時間だということもあり、賑やかだった酒場も閑散としてきた。こちらも清算をして出たいと言うのに、自分の腰に抱きついて離れようとしない酔っぱらいにはほとほと困り果てる。
それが密かに想いを寄せる相手ならなおさら、どうしたらいいのか…女性ならばスラスラと美辞麗句も出てくるというのに、この体たらく。伊達男の名が廃るぜ。人の気持ちも知らず、ヘラヘラと笑いながら抱きつく男が可愛くて、憎らしい。複雑な想いを込めつつも髪を少々乱暴にすいた。
「おら、いい加減出るぞ」赤く染まった頬を軽く叩きながら促すと、ふにゃりと笑っただらしない顔がこちらに向く。酒気をおびてトロリと潤んだ瞳は、とても美味しそうで折角正した理性がグラリと傾く。いかんいかんと自制を呼び起こしていたのに、思いがけない言葉が俺を襲った。「チューして…」
1644心の中でひっそりと溜め息をついたのが実際にも出ていたらしい。そろそろ店仕舞いの時間だということもあり、賑やかだった酒場も閑散としてきた。こちらも清算をして出たいと言うのに、自分の腰に抱きついて離れようとしない酔っぱらいにはほとほと困り果てる。
それが密かに想いを寄せる相手ならなおさら、どうしたらいいのか…女性ならばスラスラと美辞麗句も出てくるというのに、この体たらく。伊達男の名が廃るぜ。人の気持ちも知らず、ヘラヘラと笑いながら抱きつく男が可愛くて、憎らしい。複雑な想いを込めつつも髪を少々乱暴にすいた。
「おら、いい加減出るぞ」赤く染まった頬を軽く叩きながら促すと、ふにゃりと笑っただらしない顔がこちらに向く。酒気をおびてトロリと潤んだ瞳は、とても美味しそうで折角正した理性がグラリと傾く。いかんいかんと自制を呼び起こしていたのに、思いがけない言葉が俺を襲った。「チューして…」
志筑志鶴
MOURNING現パロ デフアロその掌の温もりは確かにあった。
「デーフロット!」
「お前…まだその河童着てんのかよ、もう雨は上がったんだからいい加減に脱げよな」
「カエルさんは格好良いから大丈夫なんだよ!」
「答えになってねぇし…」
差し出された手を握りながら、他愛ない話をしながら家路につく。
それがどれ程かけがえのないものだったかを今更ながらに懐かしく思う。
年齢の差は如何ともしがたく、成長するにつれてお互いの生活範囲がすれ違って挨拶することも儘ならない現状にいい加減嫌気がさしてきたところだ。
かつて差し出された手は既に無いけれど。…ならば己自らが掴めば良いのだ。
あの頃から変わらない蒼の紫陽花色の傘を持つ人の背を追いかける。カエルのレインコートは無いけれど…ちゃんと振り返ってくれるよな?勇気を出して一歩を踏み出す。
445「デーフロット!」
「お前…まだその河童着てんのかよ、もう雨は上がったんだからいい加減に脱げよな」
「カエルさんは格好良いから大丈夫なんだよ!」
「答えになってねぇし…」
差し出された手を握りながら、他愛ない話をしながら家路につく。
それがどれ程かけがえのないものだったかを今更ながらに懐かしく思う。
年齢の差は如何ともしがたく、成長するにつれてお互いの生活範囲がすれ違って挨拶することも儘ならない現状にいい加減嫌気がさしてきたところだ。
かつて差し出された手は既に無いけれど。…ならば己自らが掴めば良いのだ。
あの頃から変わらない蒼の紫陽花色の傘を持つ人の背を追いかける。カエルのレインコートは無いけれど…ちゃんと振り返ってくれるよな?勇気を出して一歩を踏み出す。