はねた
MEMO斑さんがお仕事でつかれたときかなたさんはどうするかしらという妄想です。海を見に行く 砂はともすれば足をとらえる。
おろしたてらしいスニーカーが砂浜にいくつもの跡をつけた。白地の、そこに灰色の染みがついても奏汰が気にすることはない。
風は冷えている。
潮騒は耳鳴りに似ていた。
夕暮れどきになずむ空に鳶が声高く鳴いた。
「ちあきがくつをはけっていいましたから」
そういう声はやわらかく、かぼそいわりに海風にまぎれないでいる。まぎれてしまえばいいのにとそんなことを頭の隅でちらりとおもった。
「千秋さんの言うことならなんでも聞くんだなあ」
ばかなことをとおもいつつどうしてか口にしてしまった、その言葉に奏汰はふふと笑ってみせた。
「ちあきはただしいので」
まったくそのとおりだと納得しながら、じゃあ俺は、と重ねてしまいそうになるのはどうにか自制した。
1242おろしたてらしいスニーカーが砂浜にいくつもの跡をつけた。白地の、そこに灰色の染みがついても奏汰が気にすることはない。
風は冷えている。
潮騒は耳鳴りに似ていた。
夕暮れどきになずむ空に鳶が声高く鳴いた。
「ちあきがくつをはけっていいましたから」
そういう声はやわらかく、かぼそいわりに海風にまぎれないでいる。まぎれてしまえばいいのにとそんなことを頭の隅でちらりとおもった。
「千秋さんの言うことならなんでも聞くんだなあ」
ばかなことをとおもいつつどうしてか口にしてしまった、その言葉に奏汰はふふと笑ってみせた。
「ちあきはただしいので」
まったくそのとおりだと納得しながら、じゃあ俺は、と重ねてしまいそうになるのはどうにか自制した。
はねた
TRAINING斑奏のここが好き、というポイントを書きました。キャッチミー、イフユーキャン 宴はすでにたけなわだった。
あちらこちらでクラッカーの音がひっきりなしに、壁面には色紙の輪でつくられたテープがいくつもぶらさがり、フライドチキンやポテトの香ばしい匂いがあたりに漂う。
ソファの一角に陣取り、薫はちびちびとコーラをなめていた。目のまえを道化めいた格好の日々樹が過ぎていく。珍しいものだと目をやれば、いつのまにかグラスにちいさな花が添えられていた。サービス精神がすごいよね、と感心しつつ薫は花をテーブルの上に置く。
窓の外はとっぷりと暗い。ガラス越し、談話室の灯が夜の闇をすこしばかり明るませる。
そもそもは八月の終わり、仕事漬けだった夏にすこしでも思い出作りをと、トリックスターが暑気払いもかねての飲み食いを仲間内で企画したのがはじまりだった。それが次第に広まって、結局こうして寮全体でのばか騒ぎとなっている。もちろん揃って多忙の身、なかには都合がつかない者もいるといえ見渡した限りではそれなりに集まりはいい。
3962あちらこちらでクラッカーの音がひっきりなしに、壁面には色紙の輪でつくられたテープがいくつもぶらさがり、フライドチキンやポテトの香ばしい匂いがあたりに漂う。
ソファの一角に陣取り、薫はちびちびとコーラをなめていた。目のまえを道化めいた格好の日々樹が過ぎていく。珍しいものだと目をやれば、いつのまにかグラスにちいさな花が添えられていた。サービス精神がすごいよね、と感心しつつ薫は花をテーブルの上に置く。
窓の外はとっぷりと暗い。ガラス越し、談話室の灯が夜の闇をすこしばかり明るませる。
そもそもは八月の終わり、仕事漬けだった夏にすこしでも思い出作りをと、トリックスターが暑気払いもかねての飲み食いを仲間内で企画したのがはじまりだった。それが次第に広まって、結局こうして寮全体でのばか騒ぎとなっている。もちろん揃って多忙の身、なかには都合がつかない者もいるといえ見渡した限りではそれなりに集まりはいい。
はねた
TRAINING百花のあとの斑さんと奏汰さん。斑奏かなあとおもいつつ自縄自縛片思いが業なので斑さんがそんな感じです。
はながたみ 甘い匂いがする。
陽を浴びて花々は白い。一面に広がる花の色、青空との境もおぼろにかすむ。
あたりはふしぎと凪いでいるから濃密な香りが溜まりこむ。
むせかえる花いきれ、見あげれば秋の空は青く澄んでいる。
花畑にはところどころ窪みができていた。えぐれて掘り起こされた、土のなかに花びらや葉が埋まる。なかには細かくちぎれているものもあって、それらをひとつずつ手でつまむのはなかなか難儀だった。面倒なものだなあ、とぼやきつつ斑はそれらをかたわらのごみ箱に入れてゆく。
草花をとりのぞき、スコップで地面を整える。じょうろで水をやり、花弁についた泥を流す。
ふとその手元、自分のものではない影がさした。
「……どうして君は来ちゃうかなあ」
5181陽を浴びて花々は白い。一面に広がる花の色、青空との境もおぼろにかすむ。
あたりはふしぎと凪いでいるから濃密な香りが溜まりこむ。
むせかえる花いきれ、見あげれば秋の空は青く澄んでいる。
花畑にはところどころ窪みができていた。えぐれて掘り起こされた、土のなかに花びらや葉が埋まる。なかには細かくちぎれているものもあって、それらをひとつずつ手でつまむのはなかなか難儀だった。面倒なものだなあ、とぼやきつつ斑はそれらをかたわらのごみ箱に入れてゆく。
草花をとりのぞき、スコップで地面を整える。じょうろで水をやり、花弁についた泥を流す。
ふとその手元、自分のものではない影がさした。
「……どうして君は来ちゃうかなあ」