ろまん
DONE【矢久】「普通」や「家族」といったものとの距離に悩む久森が、勢いで矢後を連れて実家に帰るまでの話です。初めて書いた小説だったので色々拙い部分もあるとおもいますが、読んでいただけたらうれしいです!pixivにも同じものを投稿しています。
玄関チャイムを鳴らすまで 蒸した空気が肌に纏わりつき、夏の到来を感じ始めた頃。都内屈指の不良校と悪評轟く風雲児高校は、相変わらずバイクのモーター音や喧嘩を囃し立てる大声が飛び交い、外にも負けぬ熱気が渦巻いていた。
しかしそんな常識外れに騒がしい学び舎でも、校舎裏となると喧騒もほとんど届くことはない。静寂を好む久森にとって、誰にも邪魔されずゲームに集中できる校舎裏の環境は、砂漠に現れたオアシスに等しかった。昼休みになるとすぐさま校舎裏に行き、桜の木の幹に凭れ掛かりながらゲームをして、昼食を食べる。
それは、久森の学生生活での数少ない穏やかな時間だった。
本日の昼休みも、久森はその場所にいた。
しかし、その表情は暗い。眺めているのはカラフルなゲーム画面ではなく、一通のメールだ。――差出人は母だった。
8748しかしそんな常識外れに騒がしい学び舎でも、校舎裏となると喧騒もほとんど届くことはない。静寂を好む久森にとって、誰にも邪魔されずゲームに集中できる校舎裏の環境は、砂漠に現れたオアシスに等しかった。昼休みになるとすぐさま校舎裏に行き、桜の木の幹に凭れ掛かりながらゲームをして、昼食を食べる。
それは、久森の学生生活での数少ない穏やかな時間だった。
本日の昼休みも、久森はその場所にいた。
しかし、その表情は暗い。眺めているのはカラフルなゲーム画面ではなく、一通のメールだ。――差出人は母だった。