惚れたら弱い「あの、馬岱殿……」
夕飯後、ポットから急須へお茶を注いでくれてる時に聞くことでも無かったのだけれど。
「んー、なに?」
「ええと……君は、何故……」
どうしても、最初からずっと気に掛かっていた。
「俺に、抱かれてくれたんだろうかと……」
「え……?」
一瞬眼を見開き、急須のお湯が溢れるのを只管眺めるしか無い。考えても、良く解らないんだ。
先ず言わずもがな、君は体格が良い。俺も腹筋は褒めて貰えたけれど、その美しい程鍛え上げられた脚力と胸筋にはとても敵わない。腕相撲で競れたとしても、勝った試しが無い。
「俺は……君より弱いのに」
正直腕力を駆使すれば何時でも逃げられるのに、一人の男としての誇りを傷つけているかもしれないのに。
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