狐の牽制 稲荷崎高校はどんな学校かと問われれば、スポーツが盛んな学校だと誰もが口を揃えて言うだろう。
その中でもバレー部はインターハイや春高の常連で、吹奏楽部と並んで学校の顔と評されている。おまけに一昨年入学してきた双子——宮ツインズがいることでも有名だ。バレー部専用の体育館からは女子の黄色い声が聞こえてくることも多かった。
スポーツの名門と謳われる学校に通っていながら何処にも属さず、家に帰ればすぐにゲームの電源を入れるような自分とは、住む世界が違う。
そんな中でも、北だけは唯一気軽に話が出来る相手だった。それも教室の中だけでの話で、深く関わることなんか滅多にない。
そう思っていた、のに。どうして自分は今、彼と帰路を共にしているのか。しかも、声を掛けてきたのは向こうからだ。同じ委員会であることは知っていたが、帰りがけに声を掛けられたのは初めてだった。
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