好きなタイプは?「好きなタイプ?」
「はい。五条先生の好きなタイプを聞きたいなーと…」
ある日の昼下がり、呪術高校専門学校京都校の三輪霞に、東京校の1年担任、五条悟は引き止められ、突然そんな質問をされた。
三輪は頬をほんのり染めながら、えへへ…と誤魔化すように笑う。
「うーん、好きなタイプ、ねぇ…」
顎に手を当て考える。
改めて考えると分からない。そもそも恋愛に興味がない。
しばらく考えると、あー、と思いついたように言った。
「素直で、臆病で、泣き虫で、自分よりも他人を心配して、他人のために精一杯尽くす…そんな人かな?」
随分具体的な返事がきたな、と三輪は思った。
(誰か好きな人でもいるのかな?だとしたら、私は眼中になさそうだな…まぁ、期待はしてなかったけど)
少し落ち込みながら、ありがとうございました、とお辞儀をして去る。
「…結局質問の意図が分かんなかったな。…ねぇ、伊地知?」
「ひっ!?え、あ、な、なんでしょう…?」
五条が後ろに声をかけると、木の影から高専事務の伊地知潔高がいそいそと出てくる。
伊地知は冷や汗をかきながら、あからさまに目をそらす。
「伊地知、さっきの会話聞いてたでしょ。最初っから」
伊地知は分かりやすく肩を揺らす。
それをニヤニヤとしながらわざとらしく質問する。
「別にそのまま出てきても良かったんじゃない?それとも…出れない事情でもあった?」
体を大きく屈め顔を覗き込む。
五条より年下とは思えない老けた顔が、分かりやすく赤くなる。
「な…なんでもありませんよ…!た、ただあの会話の横を通っていくのは野暮だと思って…」
「じゃあ遠回りしても良かったじゃん?わざわざあそこで盗み聞きするなんて趣味悪いな〜」
どんどん逃げ道を消されていく。
敵わないと思った伊地知は、投げやりに言葉を放った。
「す、好きな人のタイプは気になるものでしょう!」
少し上にある五条の顔を睨む。五条にとってそれは、上目遣いで煽っているようにしか感じなかった。
「うわー、伊地知ダイターン♡で?僕の好きなタイプから結びついたのは?」
「…?分かりません」
はぁ〜…と五条はため息を吐く。ここまできて「分からない」とは…。
「じゃあ大ヒント。これなら分かるっしょ」
五条は顔を近づけ、伊地知の唇に自分のを重ねる。
リップ音を立てながら離れると、伊地知はしばらく固まったあと、ボボッと顔をこれでもかと赤くした。
「っ、な、なっ…!」
「僕も好きだよ、伊地知」