恋歌う花と黙する金剛 彼の二十余年の人生において、自制というのは当たり前のように求められ、当たり前のようににできることだった。ブロディアを継ぐものとして子供の頃から一挙手一投足に注目を浴び、誰の発言に笑った、誰の発言に怒った、そんな他愛のないことが貴族たちの翌日の話題になる。だからこそ言動には細心の注意が必要になり、必然ディアマンドという青年は何事にも配慮し慎重な振る舞いを心がけるようになっていた。
だからこそ、今彼は戸惑っている。
(まさか自分がこんなにも貪欲だったとは思わなかった)
彼女をプールに誘ったのはディアマンド自身だ。今日は心地よい暑さを感じる陽気だったし、息を切らしながら行う鍛錬を彼女はあまり好まなかったから。ただそれだけだ。下心があったわけではない――断じて。
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