広間に一歩踏み入った瞬間、江澄は顔をしかめた。よくないにおいがする。
妓楼での邪祟騒ぎが一段落して五日、江家に妓楼と町の顔役から招待があった。妓楼の遊妓らが宴を催すという。
江澄は初め断るつもりだった。礼は十分に受け取っている。ところが、師弟たちにぜひ参加してくれと懇願された。それはもう詰め寄る勢いだった。結局、江澄は師弟たちに報いるつもりで招待を受け、再び白梅と相対することになったのだが。
江澄は案内してきた男を振り切り、奥で待つ白梅の元まで大股で歩み寄った。
「御宗主、どうかしたか」
やはり、においの元は彼女であった。
江澄は見上げる白梅の胸元に手を伸ばし、がばりとその袷を開いた。
白い肌にくっきりと呪紋が描かれている。
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