初デート夕暮れの遊園地。人の波が目玉イベントの会場へ流れ始め、先程まで賑やかだった園内が少し落ち着いた頃。閑としたオレンジ色の園内をもう一周だけ回ってから帰ろうと並んで歩く二人。隣を歩く長谷部がピタリ、立ち止まった。どうした、と問いかける前に長谷部の口が開く。
「なぁ、手、繋ぐか?」
「は?」
「ははっ冗談だ」
…
笑いながら再び歩き始めた長谷部の肩を掴みくるりと反転させて向かい合う。そしてパチパチと瞬く藤色の前で互いの指を絡ませ強く握りしめた。
「なぁ、ちょっと恥ずかしくないか」
「別に、」
「そ、そうか、」
…
…
「なぁ、やっぱり恥ずかしいな」
「そうだな」
涼しい顔と裏腹に少し汗ばんだ手のひら。
遠くから響く歓声のなかオレンジ色がゆっくり群青色へ染まる園内。肩と肩が触れるか触れないかの距離。手を繋いで歩く二人なのでした。
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