Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    esora__pw

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 4

    esora__pw

    ☆quiet follow

    #類司
    Ruikasa

    すう。すう。すう。
    胸の上下もない、吐かれる息の温かみも感じない。でもしっかりと繰り返される寝息はこの耳に届く。彼の為に用意した新しい寝床。気に入ってくれればいいのだけど生憎、寝心地の感想はまだ聞けなさそうだ。だがこのベッドに寝かせて早数時間、一度も目を覚まさない姿を確認すれば悪いことはないだろうと、類はひと安心する。
    綺麗に整った顔、長く伸びる睫毛、絹のように透き通った白い肌、穢れを知らなそうな幼い寝顔。見た目は人間とまったく変わらない容姿で、他よりも顔が良い部類に入るだろう。ただひとつ僕たちと違うのは、彼らがもつ特有の人種。
    ぴくりとも動かぬ様子にまさか死んではいないよなと。恐る恐る左胸に触れてみれば、とくりとくりと、懸命に生命活動を類の手に伝えてくる。
    これで生きているんだと、初めて見たときは目を疑った。

    『ドール』
    彼らは一日の半分以上を睡眠で過ごす。そして、その命が尽きる最期の瞬間まで見た目の若さを保っていられる。呼吸、動作、日常生活の、何もかもが必要最低限あれば生きていける人種のことをいう。僕たちの暮らすこの世界には大きく分けて三つの人種に分かたれるのは皆もよく知っているだろう。その分かれた先にも亜種として幾つか存在するのだが、ドールはそのうちのひとつ、と言っておこう。加えて説明すると、亜種の中でも極めて稀少な人種でもある。
    だから逆にいえば、珍しい人種が故に見世物にされるのが大半だ。
    眠っているだけで生きていけるし見た目の美しさも変わらない。それを普通としない僕ら人種は、それはそれは物珍しい人種だと愛玩動物のように扱い始め、欲しい欲しいと手を出して、そして贅沢にも飽き始める。そうなると今度は、闇で蠢く商売人に人身売買の標的となるのは時間の問題だった。そんな歴史があった今では、もうほとんど見世物として展示されているのが普通となってしまった訳だ。

    「早く君と会話してみたいなあ」

    かく言う僕もつい数時間前にこのドールを高く買い付けたばかり。手続きをしている最中も帰る途中もずっと眠ったままの彼に、少しでもこの願いが届いてくれと頬をひと撫でする。
    彼を見つけた経緯だが、とあるデパートの催事として来ていた演芸集団を見たのがきっかけだ。そして僕はこの時に、ドールという存在を初めて知ることにもなった。
    手品、大道芸、マリオネット、ひとり芝居。どれもありきたりな、サーカスによくある演目。足を止めて見はしたものの、類の目に特別惹かれるものはなかった。

    「今思えば、初めて君を見た姿も眠ったものだったね」

    無駄な時間だった。ため息が口からこぼれそうになった次の瞬間、類の心臓はドキリと強く反応した。
    ガラガラと大きな音を立てて運ばれるのは、何の変哲もない簡易的な鉄の檻。その中には端っこに丸まって座りながら、じっと動かず静かに眠る小柄な人間がひとり。一見すると、ただの人間がただの檻に入れられているだけ。しかし気付けば類は檻の中の人物に目を奪われて、先ほどの言葉を忘れるくらいに見惚れてしまったのだ。
    遠目からでも分かる。この世のものと思えない程に綺麗だと。髪の長さやしっかり肩幅のある体格を見るに、あの人間の性別は男。けどそんな事を忘れてしまう程に、目を奪われ言葉を失い、彼の存在すべてに惹かれてしまったのだ。
    きらびやかな美しさに透き通る肌は何よりもお似合いだ。俯き気味の顔に掛かる髪の毛は見事な艶めきを持っている。毛先へ向かって赤くグラデーションのついた柔らかそうな髪はきっと、撫でたら心地がよさそうだ。

    「君もきっと色々な場所を周り巡っていたのだろうか」

    それにしても何故眠っているのだろうか。なにか変わった睡眠方法でも行なっているのか。人間とまったく違わない容姿な彼の、一体何が。ふつふつ出てきた疑問は、すぐに解消される事になった。
    檻を運んできた男が説明する。彼の正体は、ドールだという。身振り手振りを大胆に使い、続いて冒頭に話したことをつらつらと言葉巧みに話していく。珍しいから見ていくといい、こんなに珍しいモノは滅多に出会えないぞ。と、彼を物扱いしながら。
    人種が違うだけでどうしてこうも接し方を変えられるのか。今までの男の物言いで彼の、ドールの立ち位置を察しはしたものの、やはり段々と苛立ちが募ってくる。そんな時に類の耳に入ってきた言葉で、大きく運命が動くこととなった。


    『……あのドールはウチの見世物としてはもう寿命だな』
    『となると、“また”別のを買い付けますか?』
    『そうする。あいつは綺麗だ。高く売れるだろう』
    『……では手配しておきます』

    “また”なんて、妙に引っかかる言い草。彼はれっきとした人間だというのに。しかしアイツらが手放してくれるならば……とても好都合だ。彼を、我が家に迎え入れよう。
    そう決意すれば、後は自分でも驚くくらい早かった。彼だけに用意したベッドは、ずっと眠っているなら身体を痛めないようにと素材に拘って。寝たまま着替えもしやすいようにボタンのついた衣服を買った。人身売買を取り扱う闇商人は限定されやすい。特殊なサイトへのアクセス方法なんて、僕に掛かれば朝飯前だ。簡単に見つけたそこに団体名とドールの言葉を入れて検索すれば……ほうら、直ぐに出てきた。震える指で購入ボタンを押せば、ニヤリと類の口角が歪んだ。


    「おはよう。よく眠れたかい?」

    瞼という名の、幕が開いた。その奥からは琥珀に輝く宝石が姿を現す。おぼろげに揺らぐ瞳、でも力強く輝いて、またも僕の目を奪いにかかる。瞳までも美しい彼の姿を逸してはいけないと、本能が類の頭を殴ってきて酷く痛む。なのに何故か愛おしく感じる痛み。これも彼の存在が影響しているのかと、思わず彼に微笑みかける。
    はらり、落ちてきた髪の毛が儚げに見えてしまって、消えてしまわないようにと掴んで、そっとキスをする。

    「君の新しい家族だ。よろしくね」

    あ、やっぱり。思った通り君の髪の毛はとても柔らかい。いつまでも撫でていたくなる心地良さだ。さらり、さらり、と何度か手を動かしていると、彼の瞼がゆっくりと下がって再び眠りに就いた。

    これは、恋に似たような感情なのだろうか。守りたい、大切にしたいと感じたこの想いに、なんと名前をつけようか。ヒトとの関わりを極力持とうとしない僕が、こんなにも惹かれたんだ。きっとこれが、一目惚れってやつなんだろう。
    初めての感情にはあんまりいい思い出はないんだけど、今は、凄く気持ちがいい。嫌な気はしない。君にも、そう思ってもらいたいなあ。
    これから一緒に、お互いを教えていこうね。
    だから今は、まだお眠り。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💘💘💘💘💘💘💘💘💘💘💘💘😭💕👏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    x12_rt

    PROGRESS※18歳未満閲覧厳禁※

    2024/5/26開催のCOMIC CITY 大阪 126 キミセカにて発行予定の小粒まめさんとのR18大人のおもちゃ合同誌

    naの作品は26P
    タイトルは未定です!!!

    サンプル6P+R18シーン4P

    冒頭導入部とエッチシーン抜粋です🫡❣️

    あらすじ▼
    類のガレージにてショーの打合せをしていた2人。
    打合せ後休憩しようとしたところに、自身で発明した🌟の中を再現したというお○ほを見つけてしまった🌟。
    自分がいるのに玩具などを使おうとしていた🎈にふつふつと嫉妬した🌟は検証と称して………

    毎度の事ながら本編8割えろいことしてます。
    サンプル内含め🎈🌟共に汚喘ぎや🎈が🌟にお○ほで攻められるといった表現なども含まれますので、いつもより🌟優位🎈よわよわ要素が強めになっております。
    苦手な方はご注意を。

    本編中は淫語もたくさんなので相変わらず何でも許せる方向けです。

    正式なお知らせ・お取り置きについてはまた開催日近づきましたら行います。

    pass
    18↑?
    yes/no

    余談
    今回体調不良もあり進捗が鈍かったのですが、無事にえちかわ🎈🌟を今回も仕上げました!!!
    色んな🌟の表情がかけてとても楽しかったです。

    大天才小粒まめさんとの合同誌、すごく恐れ多いのですがよろしくお願い致します!
    11