22.2.22「水上先輩ってネコみたいですよねえ」
「どこがや、お前のがよっぽどやろ」
「え〜そうですか?あ、でもそれで言うとうちの隊みんなネコっぽいかも」
なんかはじまった。これはめんどくさそうだと思いつつ、作戦室で他のメンバー待ちにつき暇なので付き合うことにする。
「猫じゃらしに飛びついて元気に遊ぶとことか海っぽいし、表情変わらんけどめっちゃ感情豊かで動きに出るんはイコさん彷彿とさせるし、構いすぎるとかわいい顔して怒るのはマリオって感じしますね、うん」
まあ確かにそう言われればわからんこともないけど、
「最後の普通に嫌がられとるだけやろ」
「……そんなことないですよぉ」
あまり構われたがるのを良しとしない猫を取り憑かれるように好きになってしまった人間は誰しも経験があるのだろう。
「心当たりあるやつの間やん」
「う……あ、そうそうネコが芸覚えないのってなんでか知ってます?」
露骨に話を逸らされた。そんな嫌やったんかい、なんかごめん。
「その言い方は覚えられる頭はあるけど覚える気がないってことか」
「うわさすが、そうなんですよネコってめっちゃ賢いんですけど、犬と違って自立心がデカいし群れる生き物じゃないから、生きるのに必要ないことにあんま興味ないらしいんですよ。そういうドライに見えるとこもあって、でも気まぐれで甘えてくれるとこが先輩と似てるなって」
心当たりがないこともないが。むしろ四六時中ベタベタ甘えられる奴の気が知れない。
俺は俺。こいつはこいつ。お互い相手以外の世界があってそれを大事にすることは当然である。それでも自分という世界の中で隠岐の割合はだいぶ大きいが。
「……お前もしかして俺のこと猫っぽいから好きなん??」
「ちゃいますて、好きなものの共通点あってうれしいなあて話ですよ」
「さいですか」
「ちょっと、あからさまに興味なくさんでくださいよ」
「どんな反応せぇっちゅうねん、これでええ?にゃんにゃん」
ちゃんと猫の手付きでやってやる。棒読みで。
「も〜すぐちょける」
「俺は至って真面目やぞ」
「怖いほどさらっと嘘つきますね」
と他愛もないやり取りをしていると作戦室のドアが開いてやかましい人たちが帰ってきた。頭に耳がついている。先ほどまで話題に上がっていた動物の耳が。
「お疲れ様ですー!」
「おー2人もう来とったんか、なあ見てこれ、ねこちゃん」
「わ、ねこちゃんや〜!その耳もしかしてトリオンですか??」
「いや普通にカチューシャ。なんや今日猫の日らしいな、大学で配っとる人たちがおっておもろいから全員分もろてきてん。はいこれ隠岐の分」
「やった〜」
「え、待って俺のもあるんですか、いりませんよ」
「髪の毛で見えなくなるからですか?」
「そこまでボリュームないわ、男4人でそんなんやって何がおもろいねん」
「マリオちゃんの分もあるで」
「つけましょ」
隠岐が急に猫の話を振ってきたのはそういうことだったのか、と思いつついかに後で来るマリオに猫耳をつけてもらうかという作戦会議に参加し、無事自分の案で生駒隊全員でねこちゃんになることに成功した。
イベントに乗せられて浮かれるのもはしゃぐのも学生の本分である。
特に大好きな猫の日ということで浮かれまくっていた恋人に、猫らしいかはわからないが後でもう少し甘えてやるかと気まぐれに思うのだった。