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    ・中夜

    @Mayonakanakana2

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    ・中夜

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    ジュン茨ワンライ【ヘアピン】

    手作りは流石にキモイか…と踏みとどまったジュンと今日も残業の茨のジュン茨。

    #ジュン茨
    junThorn

    「ははっ。随分ガンギマってますねぇ〜?」
    「去ね」
    「ちょっと! わざわざ飯買ってきてやったってのに、その言い草はないでしょうがよ」
     徐々に近づいてくる足音にちらと目をやると、確かに、上着のポケットに突っ込まれた腕にガサガサとエコバッグがぶら下がっている。
    「……そうですか、それはどうも。では、その手荷物を置いてとっとと帰ってください。今日は本当に構っている時間がありません」
     パソコンの背景に見慣れた小豆色のニットがチラついても、画面から顔を上げたりはしなかった。カタカタと増えていく文字と画面右上に次々流れるメールのポップアップ。明日に回せるものは何もかも回して……って、待て待て朝イチの収録が今頃リスケだと? ……チッ、あのご老体とはあまり揉めたくありませんね。最短で殿下に空きが出来るのは……、明々後日の昼、は天気がまずい。仕方ありませんね。明後日の朝にねじ込みますか。
     そうして俺が仕事を進めている間にも、ジュンが帰る気配はない。机の前でずっと同じように突っ立ったまま、ボケ〜っとこちらを見ているらしい。
    「茨さぁ〜」
     グビッと煽ったトールサイズのエナドリを、音を立てて机に戻す。だから置いて帰れって言ってるだろうが。
    「そのヘアピン、どうしたんすか?」
    「……ヘアピン?」
    「いや着けてるじゃないですか。そっち側の前髪」
     そっち、とジュンが指差したところを探ると硬く細長い何かが手に触れた。すっと抜き取ればパラパラと長めの髪が落ちてきて、くすんだ赤紫の視界に、ああそういえばと思い出す。
    「ひなたくんに貰いました。いつものピンを無くしてしまったそうで、慌てて別の物を買ったはいいが色味が2winkらしくないので使いにくい、と。副所長もデスクワークの時くらい視界良好な方がいいんじゃないですか〜?とかなんとか言って、無理やり自分に押し付けて帰って行ったんですよ。案外快適だったので忘れていました」
    「ふ〜ん」
     さっきまでと比べてしまうと、やはりレンズに纏わり付く髪が鬱陶しい。まあ、折角ですし、今日中くらいなら着けていてもいいでしょう。手早くピンを元に戻して、未だにこちらを見つめる男を手振りで追い払う。それでも動かないジュンに呆れて、というか諦めて、俺は仕方なくタイピングの手を休めた。
    「まだ何か?」
     いつも通りの眠たげな金色は、じっと俺のデコの辺りを見つめている。おもむろに伸びてきた手が留めたばかりのピンを撫で、そのままするりと奪い取られた。指先で輝くくすみピンクを繁々と眺めている。
    「これ、1個しかないんすか?」
    「……いえ。小袋ごと貰ったので、まだ20本はありますが」
    「ふ〜ん」
     そう呟いたかと思えば、ジュンはふわふわ揺れる自分の前髪を抓み、何を血迷ったのかそのヘアピンでクルクルっと留めてしまった。ぴょんぴょん跳ねた猫っ毛とピンクのヘアピン、そして口元から満足げに覗く八重歯。そういえば、こういう路線のヴィジュアル撮影はまだ攻めたことがありませんでしたね。覚えておきましょう。
    「へへっ、茨がずっと着けてたからですかねぇ〜?ちょっとあったかい」
    「はぁ……、そうですか……」
    「じゃ、言いつけ通りオレは帰るんで。折角買ってきたんすから、ちゃんと食ってくださいよぉ〜?」
    「ああ……。ありがとうございました」
    「ん」
     パタン、と閉まった扉はそれ以降何も言わなくて、見送った俺は机に置かれた夜食を手に取る。
    「変なやつ」
     頬張った肉まんはびっくりする程の熱を持っていて、思わず、はふり…と白い息を吐いた。
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    ・中夜

    DONEHAPPY JUNIBA DAY!

    茨さんほとんど出てこない同棲ジば。
    掃除洗濯をしたのは昨日なのにシーツを替えたのは今朝、が本作のポイントです。
    日々は続くから(やっぱり帰って来なかったな……)
     ヘッドボードの明かりを消した後も手放せないでいるスマホを開いて、閉じて、もう何十回も目にしたデジタル時計の時刻にため息をついた。うつ伏せに押し潰している枕へ顔を埋め、意味もなくウンヌン唸ってみる。けれど、どれだけ待ってみたってオレの右手が微かなバイブを告げることはないし、煌々と現れたロック画面の通知に眩しく目を眇めることもない。残り数分で日付を跨ごうかというこの時間に誰からも連絡が来ないなんて、当たり前の話ではあるんだろうけど。その一般的には非常識とも言える連絡を、オレはかれこれ2時間もソワソワと期待してしまっているのだった。
    「……茨」
     待ち侘びている方が馬鹿げてるのはわかっている。そもそも今日は帰れないって、だから昨日の内にお祝いしておきましょうって。端からそういう話だったのだ。帰れない今日の代わりに、茨はオレの好きなメニューを沢山夕飯に出してくれたし、オレだって茨が朝から料理に集中できるように洗濯から何からその他すべての雑事をせっせと片付けた。夕方普段より早めのご馳走に、2人で作った苺タルトも平らげて、余った料理も1粒も無くなったお皿も仲良く片付けた後ソファーに並んで触れ合って……昨日まで、ううん、ついさっき。風呂から上がってベッドに入るまで、本当になんの不満もなかったはずなのに。
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