そのまんまの君が好きかさかさと6本の爪の長い脚を交互に動かしながら、
吸血鬼が接近してくる。
「退治人め…………殺してやるッ!!!!」
キシャァァァァ!!!
軋んだような声を上げながら、
そのうち数本をやけくそのように突き出し肉薄するそいつの攻撃を左半身を引いて爪を躱す。
ちり、と頬に何かが掠める感覚。
だけど、
そんなもん些細な違和感だ。
瞬間照準を合わせる意識にはまるで影響などありはしない。
1秒を何倍にも延ばしたかのような感覚。
そんな永遠にも思えるコンマ数秒。
当たる。
そんな確信とともに引き鉄を引く。
銃口から放たれた弾は、
右手一本でも寸分のズレもなく──まぁこの至近距離で外す方が難しそうだけど──吸血鬼の額に命中する。
麻酔弾は頭蓋を貫く事なく額で潰れて、
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