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    hebotsukai

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    hebotsukai

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    自カプの学パロ書いた(学パロ!?)

    #黒埼ちとせ
    kurosakiChitose
    #白雪千夜
    whiteSnowThousandNights

    「じゃあ、私はここで。またねっ」
    「ああ、新入生と帰るんだっけ?」
    「うん♪ 今日初授業だから、感想いっぱい聞かなきゃ」
    「ママかよ。何か、ちとせっぽくないね。面白いけど」
    「ねー。わざわざ待ち合わせて帰るなんて、よっぽど仲良いんだね」
    「そう♪ 分かったら……お暇してくれる?」
    「ヒューッ。ガチじゃん草生える」
    「ね。もしかして私ら牽制される?」
    「あは、冗談だよ。クラスメイトだってまだ馴染んでないのに、下校まで上級生に囲まれたら落ち着かないじゃない」
    「それもそうだね。余計ママっぽいけど」
    「今度紹介しろよー。ばいばーい」
    「あは♪どうしよっかなー」
    「あんま束縛すると嫌われるよー。またねー」
    「……またね♪」

    「はぁ……」
     クラスメイトと別れると、自然に溜息が漏れた。……顔、変じゃなかったよね?
     浮かれてるのは認めるけど、まさか「ちとせっぽくない」とまで言われるなんて。気を付けなきゃ。

    「ちーちゃん!」

     そんは内省しながら校門の前で踞っていると、聴き慣れた透き通った声と、軽やかな足音が耳に入った。

    「あの子のことばかり考えてるのが、私なんだけどね。んーっ…しょっと」 

     立ち上がって校門から昇降口をこうと振り返る。

    「お待たせ」
    「きゃあ!?」
    「わっ、大丈夫?」

     そしたら世界一可愛い笑顔に鉢合わせて、尻餅をついてしまった。
     ……相変わらず脚が早い。部活は陸上部かな?

    「……ただの立ち眩みだよ。気にしないで」
    「嘘でしょ。……ごめんなさい。叫んだり走ったりして、驚かせて」
    「あは♪ いーよ。急いじゃってぇ、可愛いんだから」

     申し訳なさそうに丸まった背中を撫でてあげる。薄い背中が着慣れたセーラー襟で覆われていて、そこから更に白い頸が伸びているのにドキッとした。少し大人に近づいた高校生の服、私のと同じ服。……早く慣れなきゃ。

    「だって、ちーちゃんから校門ってメッセージ届いた頃、まだHR中だったんだよ」
    「やっぱり新入生のクラスはちゃんとしてて初々しいね。そのうちどんどん短くなるから安心していいよ」
    「それもどうなの?」
    「早く帰れるに越したことないでしょ?行こっ」
    「でも……わっ」

     真面目に審議中の彼女の腕を取って進む。
     同じ制服を着て、同じ学校に通って、同じ帰り道を歩く。

     たったそれだけ、ありふれた状況なのに奇跡みたいに感じるのはきっと……。

    「ねぇ、ちーちゃんっ。どうしてそんなに嬉しそうなの?」
    「どうしてだろうね。あはっ♪」

    ✳︎✳︎✳︎

     私を「ちーちゃん」と呼び、私に「ちーちゃん」と呼ばれるこの子は、「白雪千夜」と言う。可愛い名前の、とっても可愛い、二つ年下の『友達』だ。

    「初授業はどうだった?緊張した?難しいところはあった?」
    「全く。さわりはちーちゃんが教えてくれてたからね。初めてだからって心配する必要ないよ」

     泣きついてきたら面白いなと思ってけど、流石は優等生のちーちゃんだった。
     涼しげな顔で私がさっき買い与えた温かいコーヒーを啜ってる。

    「そう♪ 私の生徒さん一号は優秀だね。今は後輩一号かな」
    「……うん。そうだね。先輩みたいに皆勤賞目指して頑張るよ」
    「友達100人もね♪」
    「えっ……」

     私達は家が隣同士の『幼馴染』。中学と高校は一年ずつしか被らない『先輩と後輩』ではあるけれど……。やっぱり、嬉しい。学校が違うと『家庭教師をしてあげる』とか『作り過ぎたお菓子をお裾分けする』とか、繋がりを保つのも大変なんだから。
     
    「使ってる教科書も、先生の教え方も全部ちーちゃんと一緒で……また同じ学校通えてるんだなって、嬉しくなった」
    「あはっ、ちーちゃんも嬉しいんだ。良かった♪」
    「どうしてだと思う?」
    「え?」

     さっきまでの談笑とは違う、少し熱の篭った言葉。
     思わず足を止めて振り返ると、真っ直ぐ私を見上げる大きな瞳。
     
    「同じ学校に通ってれば、もっともっと、ちーちゃんといられる時間が増えるから。卒業するまでの一年だけでも」

     この子と「ちーちゃん」と呼び合うのが大好きで、少しだけ苦手だった。

     二人の間で交わす言葉が、私の溢してしまったものなのか、あの子が言ってくれたことなのか、分からなくなってしまうから。

    「そしたら、勉強教わったりお菓子を振る舞ったりだけじゃなくて、もっと色々できるでしょう?そう思ったら、私……」

     ちーちゃんは言いながら、鞄から何かを取り出す。

    「だから、これ」

     そして私の手を取って、温かい掌で私の掌を包んで、それを握らせる。

    「……大好きです。貴女の最後の高校生活、私に……ください」

     それを手紙と認識すると同時にぎこちなく抱きしめられていた。


    「あは……、何で敬語なの?」
    「えっと、緊張してて……。おかしいね、ふふっ」


    ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎

     そこからはずっとふわふわ空を飛んでいるような心地。
     告白の返事を考えるだけの実感が沸いたのは、次の日のお昼休みになってからだった。

    「はぁ……」

     もうずっと昔に一目惚れした女の子に、「大好き」と伝えられた。
     
     もうすっかり葉の緑が混ざった桜の気の下で、貰った手紙を読み返す。

     何度も。何度も。なんども。

     曰く、“あなたの瞳は道標のようで、いつも勇気を頂いておりました。“だとか。

     曰く、“月明かりのようにあなたを照らす光になりたいです。“だとか。

     曰く、“傍にいて、同じ時を刻みたいと願っています。”だとか。

     見慣れた癖のある楷書で、少し詩的な文章が綴られてる。……何故か敬語で。

    「〜〜♪……あはっ。 ラブレターっていうより、ラブソングみたい」

     でたらめなメロディをつけて口づさんでみた。馬鹿にしてる訳じゃないの。

     思わず歌っちゃうくらい嬉しくて……現実逃避せずにはいられないくらい戸惑ってる。

     だって、私の方がずっと、ずっと前からずっと大好きだったのに。

     その私が想いを伝えるのを諦めてたのに。

    「って……ああんっちょっと!」
     
     不意に、悪戯な風が便箋を拐って行った。

    「やだっ、待って、それは私のなのっ!駄目だってば、もうっ」

     舞い踊る便箋を必死に追い駆ける私は、どんなに滑稽だっただろう。
     中庭を行き交う人に目もくれず、十数メートルほど駆けて、運良く木の枝に引っかかったそれを取り戻した。

    「ごめんね。怖かったでしょ?」

     慌てて汚れを払ってそれ抱きしめる。あの子の笑顔の記憶ごと。
     
     怖かったの、全部。

     「私のものになってください」って伝えることが怖かった。
     万が一にもフラれて、気不味くて疎遠になっちゃうのは絶対に嫌。

     大好きな「ちーちゃん」を「私のちーちゃん」に変えてしまうことが怖かった。
     好きなものは何でも私のものにしたい。でも私の大好きなのは、あの子らしい、あの子。
     
     『お友達』、『家庭教師と生徒』、『先輩と後輩』。時と場合によって色々だった私達の関係が、『恋人』に固定されることが怖かった。
     恋愛感情だけがすべてじゃないもの。それだけになっちゃうのは……寂しい。

     もっと近づいて、密着して、絡め合わせて、それでいつか、お互いが自分の命より大切な存在に変わって、永遠を願った後……引き裂かれる悲しみが怖かった。
     進学とか就職を機に疎遠になるってよく聞く。いつか親の母国に還されるかもしれないし。それに、女の子はいつか男の人のお嫁さんになるものだから。
     
     全部が怖かった。
    でも、あの子は全部乗り越えて来てくれた。
     
    「……本当に、夢みたい」
     
     強い風にまた便箋の端が揺らされてる。

     戸惑ったけど、怖かったけど、やっぱり手放したくなかった。
     手に当たる風は冷たいのに、昨日あの子に包まれた温度を覚えているから寒くない。
     この温もりに応えたい。
     
     誰かに拐われてしまう位なら、ちゃんと私のものにしよう。

     「私のちーちゃん」になったあの子のことも、私はきっと愛してる。

     私とあの子を表現する言葉を、もっと増やしてしまおう。

     引き裂かれる悲しみに備えるなら、逃げずに楽しい思い出を積み重ねていこう。
     いつか思い出を抱いて笑えるように。

     もっと根本的な解決方法があれば良いんだけど。
     例えば?「現実を捨てて御伽噺の世界に逃げる」とか、「ビジネスパートナーになる」とか……、それはちょっと夢見過ぎかな。

     でも、いいよね。
     少なくとも今日からの私は、あの子の彼女として高校生活最後の一年を飾れるんだから。

    「そしたら、キス……とか。色々するのかな……。やっぱり、夢みたい……♪」

     昨日のドラマで見たラブシーンを思い出して顔が熱くなった。
     
     曰く、“晴れたら屋上で。返事を聞かせてください。“……だって♪

     早く放課後になれ。


    ✳︎✳︎✳︎✳︎


    「お嬢さま。お嬢さま、朝です」
    「朝は毎日くるってぇ〜……」
     
     千夜は昨日と同じ時間に主人の身体を揺り動かし、ちとせは昨日と同じくぐずりながら目を擦った。

    「おはようございます」
    「……おはよ、私の千夜ちゃん♪」
    「……お嬢さま?」

     朝日を背にした千夜は普段の真顔のまま不思議そうに小首を傾げた。
     
     千夜は彼女を『お嬢さま』と呼び、部屋着のワンピースやエプロンを揺らしながら、甲斐甲斐しくちとせに仕える。
     ちとせは休学明けで四年目の高校生活を送りながら、千夜と共にユニットを組んでアイドル活動を続けている。
     
    「夢を見てたの。……もう、よく覚えてないんだけど。私、『千夜ちゃんとキスできるかも〜!』ってはしゃいでた」
    「……」
    「あっ!またそうやって私のこと“はしたない子“を見る目で見るぅ〜!」
    「朝からお戯れが過ぎますよ。今日もお仕事があるのですから、早く顔を洗ってください」
    「んっ……。ふふっ」

     お固い小言とは正反対の柔らかいものが唇と瞼に押し当てられた。
     夜色の瞳は緩やかな弧を描き、桜色の唇を小さく開いて尋ねてくる。

    「目が覚めましたか?」
    「……だめ。どっちが夢なのか、分からなくなっちゃった♪」

    (了)
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    ❤❤
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    永島ㅤ

    SPOILERVelvetRoseの考察メモ。「」とじは原作の台詞引用。デレステ時空中心。【千夜ちゃんってどこに住んでたの】

    「あの頃」、ふたりは「ただの友だち」だった。
    千夜いわく、当時のお嬢さまは「銀世界に遊ぶ、無邪気な少女」。
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    お嬢さまのアイドルとしてのプロフィールは「出身地 東京都」だが、東京を銀世界と準えるのは信じ難い(主観だが)。

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    モバマス時空の「祝い事は、無縁」やデレステ時空の『夢を見ることが許される定義』の諸独白、「家庭の事情」に対する認識等を鑑みるに、「幼い頃」から既に千夜の人生は平穏とは言い難い。

    「幼い頃」は「あの頃」以前の話だと解釈しているため、千夜がちとせと出会う前からこの状態だと捉えている。

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    hebotsukai

    MOURNINGテキスト投稿テスト。ちとせさんと教習所。「私の教官さんはどこ? ひょっとして……あなた? 」
    「君が黒埼ちとせさんなら、そうだよ」
     漫画の世界から飛び出して来たような少女ーーそれが生徒の第一印象だった。
    「良かった♪『あなただったら良いな』って思ってたから。あなたは?」
    「はいはい、こちらこそ。白井です。よろしくね」
     冗談めかして笑う彼女へ無愛想に返しながら、白井は「はて?」と首を傾げる。フリルの付いたワンピース姿から自然に“少女”と認識したが、この季節にこの場を訪れる女性は、大抵“少女”と呼べる年齢ではないのだから。
    「……はいっ、じゃあ周囲の安全確認してから乗車してくだっさい」
    「はーい♪」
     生徒は少女のように声を弾ませながら、乗車の準備を始める。
    「京安ドライビングスクール」の文字列が印字された安価なハイブリットカーと彼女のツーショットは不釣り合いで、フィクションと日常がない交ぜになった夢を見ているような気分になった。
    「準備出来たよ」
     イメージに反してちとせは乗車前の周囲と車体の確認と座席周りのポジショニングをつつがなくこなし、早々にハンドルを握っていた。
    「随分慣れてるね」
    「予習したもの。それに撮影でも、 2062