この国の魔法使いは、一人前になると使い魔と契約を結ぶ。
生涯でたった一度。その生を終えるまで、互いに信頼し合える唯一無二の使い魔を。
藍忘機は将来有望な魔法使いだった。
強い魔力、深い知識、その美貌も相まって若い魔法使いたちの憧れだ。
そんな藍忘機にもただ一つだけ欠けているものがある。
一人前と呼ばれても差し障りのない実力を持っているのに、いまだ使い魔と契約できずにいたのだ。
藍忘機は気難しく、かつ対話が苦手だった。
使い魔候補たちはそんな彼のことが理解できず、一生を捧げるのはごめんだと言った。
彼はそれでもいいと思っていた。無理に一緒にいて相手に不快な思いをさせるのもするのも嫌だった。
それでも使い魔探しをやめなかったのは、兄が羨ましかったからかもしれない。
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