逆転 歳を取り、ボクは随分とお酒を飲む様になった。人には言えない薬もたまに注射する。そうしてぼんやりと見えてくる先生に向かって、泣いたり、笑ったり、喚いたりするのがボクの日課だ。自己分析してみれば頭が変な人のようだけど、実際先生の魂はボクにしか見えないのだからしょうがない。お酒や薬の力でうまくトランスに入った時だけ、ボクは先生の魂と会話ができる。ボクがもっと強い魔法使いであったら、もっと他にやり方があるのだろう。でもボクにはこれしかなくて、先生にはいつも哀しい顔をさせてしまう。今日も今日とてボクは浴びるようにお酒を飲み、呪文を唱える。空中に滲み出て来る先生は、空になった酒瓶を見て眉を下げる。
「ミチル、もうやっちゃダメって言ったよね」
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