まぶしい世界 大雪の降った翌朝、甲板に上がると手のひらサイズの雪うさぎが鎮座していた。自分の艦ではなく、隣に。夜のうちにでも誰かしら若いのが作ったのだろう。関東南部でこの量の積雪は珍しくちょっとしたイベント騒ぎになるのも無理はない。自分自身も長崎を経ったあとはずっと横須賀だからさほど慣れているわけではないのだが、童心よりも寒さが勝る。目的の様子見は済んだとさっさと艦内に戻ろうと踵を返したところで呼び声が聴こえた。
「おはようございます! こいつね、俺が作ったんですよ。なかなか可愛く出来てるでしょう?」
得意気に指差す仕草に思わず若いな、と呟く。耳ざとく拾った後輩は笑顔から一変し、やや不満そうなむくれ顔になる。
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