おはようからおやすみまで その1「起きろー、桜庭。朝だぞー」
「薫さん、もうご飯できてますよ」
布団に包まれたまま微動だにしない薫を、二人は柔らかな声で揺り起こす。今日から二日間、久しぶりに三人揃ってのオフだった。三人とも夜はそれぞれの自宅で過ごしていたが、示し合わせたように輝と翼は揃って薫の自宅を訪れていた。
両手にスーパーの袋を提げ、勝手知ったる何とやらで輝は冷蔵庫の中へ食材を詰め込む。翼も買い足した調味料を戸棚に仕舞い込んだ。キッチンに立つ許可は前日にとってあったので、輝は早速、朝食の準備へ取り掛かった。――今日はパパッと出来るからパンケーキでいいか。明日はフレンチトースト作ってやるからさ。わあ、ありがとうございます。オレ、輝さんの作ってくれる料理なら何でも大好きです。二人並んでキッチンに立ち、家主の眠っている間にバターとシロップの混ざった香ばしい香りを漂わせ始める。
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