ポッポタイムの深夜が珍しく静かに過ぎていく。
いい加減にしろとクロウが指示を僕にとばしてきて、パソコンから引き剥がされた遊星はシャワー室に押し込まれた。遊星が終わったら次はお前だと、遅い時間ながら食事の準備をしてくれるクロウに感謝を伝えながら、遊星と僕の着替えを取りに動いた。
脱衣所に荷物を置いて、テーブルを綺麗にしていると遊星が出てきた。普段の髪が大人しくなっていて、ずいぶんと印象が違う。垂れたウサギの耳みたいで可愛いなと見ていたらクロウに烏の行水はするなよと言われた。そうだった次は僕だった。
遊星はクロウに小言を言われながら水分が残った髪を拭いて貰っている。
目を閉じて力が抜けた隙だらけな姿は、僕には馴染みの無い姿で。
それがほんの少しだけ、羨ましく思えた。
お腹が満ち足りて眠くなりながら食器を片付けて、歯磨きも済ませた。
さてリフレッシュも出来たし作業の続きー……は、クロウの睨みで呆気なく消えた。遊星と二人で声を揃えて、おやすみなさいと返事をする。
僕はいつものようにソファーに肌掛けを出して、と、服の裾がよわく引かれた。
おや、と振り返ると遊星の指先が離れていくのが見えた。……幼馴染みのあの二人にもしているか分からないけれど、遊星の不器用な甘え方だ。
気付かなければそのまま一人で部屋に、気付いたら二人で一緒に。
別にやましいことがある訳じゃない。
遊星の個室のベッドに二人で眠るだけ。
ただ、クロウやジャックがいると、この合図はけっして来ない。
だから僕は、不器用な甘え方だなと思ってる。
もし、遊星にとって足りない部分があるのなら、僕にもその場所を埋める手伝いがしたい。
人に、誰かに言えない寂しさや辛さを、まだ時折魘される苦しみを、僕が傍にいる事で何か出来るなら。
遊星の部屋の扉まで来たら、僕は自然に、遊星よりもはやくドアノブを握る。
ねぇ、遊星。僕は僕の意思でこの部屋で朝まで眠るんだ。
だから、そんな顔をしないでと伝えたくて、彼のむき出しの肩を抱き寄せて、扉を開けた。