Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    111strokes111

    @111strokes111

    https://forms.gle/PNTT24wWkQi37D25A
    何かありましたら。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 290

    111strokes111

    ☆quiet follow

    我々が抉った傷のひとつひとつから我々の心臓を狙う者が現れるだろう。彼らが流した血は生々しく抉った心臓はまるで柘榴のようだった。

    クロロレワンドロワンライ第44回「秘密」 クロードがアンヴァルに放っている密偵たちはどれもこれも芳しくない知らせを寄越してくる。エーデルガルトの目指しているもの、は分かる。平時のパルミラは緩やかな国で政治は宗教に興味を持たないし宗教も政治に興味を持たない。欲しい土地ができた時に月の光の及ぶところ全てを与える、と言う言い伝えを敢えて悪用するくらいだろうか。
     ただパルミラの場合は土地とそこから得られる税収が全てなのだ。その土地に暮らす民が頭の中で何を考えていようとそこには介入しない。セイロス教の場合はそこが違う。クロードは頭の中に手を突っ込まれて掻き回されるような嫌悪感を覚える。今クロードの目の前にいる円卓会議に出席するような諸侯たちはまだましなのだ。

    「豊作であれば西部の諸侯たちもあのような振る舞いはしなかっただろう」

     グロスタール伯は王国の西部諸侯の振る舞いについて苦々しく思っているらしい。あちらが一丸となって帝国に対抗しなくなれば矛先が同盟に向いてしまう。

    「そうですね、我々が辛うじて礼節を守っていられるのはこの土地が豊かで王冠を戴く者がいないからです」

     高値でガラテアやフラルダリウスに食糧を売りつけかなり懐が豊かになったエドマンド辺境伯は何食わぬ顔でそう語った。彼が先程から口にしているのは東方の着香茶でおそらくブリギットかダグザを経由してフォドラに流通している。パルミラと国交が成立すればエドマンド家は更に栄えるだろう。

    「では引き続きファーガスには矢面に立ってもらおう」

     ディミトリに恨みはないが人間は何かを守るためなら自分が予想していたよりも遥かに卑劣なことが出来る。諸侯たちとの会議は珍しくクロードへの異議がない状態で終わった。レスター諸侯同盟はアドラステア帝国そしてパルミラ王国と国境を接している。二正面作戦など正気の沙汰ではない。だがクロードには懸念があった。フォドラの内紛が再びシャハドを焚き付けてしまったら急いでミルディンに蓋をするしかない。

    「グロスタール伯、少々二人きりでお話ししたいのでお時間をいただけないだろうか」
    「では息子にもう少し待つように伝えなくては」

     グロスタール伯は今回ローレンツを帯同していたようだ。エドマンド辺境伯はどうだろうか。彼は留守を預けるという形でマリアンヌに研鑽を積ませることも多い。クロードは召使に従者の間で控えているローレンツへの言伝を頼み祖父オズワルドが個人的に使っていた応接間に招き入れた。

    「アンヴァルからの誘いは中々情熱的なようで……」
    「君やローレンツはどうだから知らんが定石通りの振る舞いに動揺するほど私は若くない。見れば分かるだろう」

     彼の言う通り分割統治は難題解決の基本で現グロスタール伯はクロードの母と同世代だ。グロスタール家との間に楔を入れられたらクロードは帝国の出先機関と化したグロスタール家への対応で手一杯になってしまう。クロードはグロスタール伯の言葉に頷いた。

    「ご子息の目下の悩みはお父上の心の内が知れないことらしい」
    「あれは気直な質だから私は当分隠居できそうにない」

     ローレンツは捻くれたクロードからすると身体も心も素直だ。しかし身体の反応と心が食い違い矛盾している。クロードが少しちょっかいを出しただけであんなに初心な反応を見せるくせにクロードを信用せず何故、としか言わない。

    「いや、この場合は頼もしい限りです。グロスタール伯、ミルディン防衛に関してひとつ策を考えたのでお聞きください」

     グロスタール伯はクロードの策を一通り聞き終えるとため息をついた。

    「あれもそろそろ秘密を持ってもいい年頃だが盟主殿のようになっては領民が困るな。領主は領民に対してその親のように誠実でなけれはならない」

     ローレンツは秘密を既に持っているがどうやらグロスタール伯はクロードとの関係に気付いていないし無責任な親もそこかしこに存在する。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works

    111strokes111

    MAIKING「説明できない」
    赤クロ青ロレの話です。
    11.末路・上
     クロードは先日、あんなことをしでかしておきながら怯えさせてすまない、とローレンツから逆に謝られてしまった。あれから何度か時間をとって話し合いをしてみたが互いの知る未来にかなり大きな食い違いがあることが分かりその後はおかしな雰囲気にはなっていない。

     細かな違いはあれどクロードの祖父が体調を崩し盟主代理として円卓会議に出席すること、それとマイクランが破裂の槍を盗み出すことは共通していた。

    「俺はマイクランが討ち取られたという話しか知らない」

     クロードの知る過去でもローレンツの知る過去でも級長が不在の可能性があるなら、と言うことで金鹿の学級はコナン塔へ行かなかった。

    「そちらでも箝口令が敷かれていたのか」

     教会は何かを隠している、というのが元からのクロードの主張なので教会の態度に矛盾はない。ベレトから馬の面倒を見るように命じられた二人はそれぞれ別の馬に新しい水や飼い葉を与え体を拭き尻尾の毛に櫛をかけ絡まっている塵を取り除いてやっている。いななきや馬が立てる物音が話し声を隠してくれた。今後の展開が色々と気になるところだが今回も祖父ゴドフロアの具合が悪くなるなら 2156

    111strokes111

    MAIKING「説明できない」
    赤クロ青ロレの話です。
    15.鷲獅子戦・上
     フレンが金鹿の学級に入った。クロードにとっては謎を探る機会が増えたことになる。彼女は教室の片隅に座ってにこにこと授業を聞いてはいるが盗賊と戦闘した際の身のこなしから察するに只者ではない。兄であるセテスから槍の手解きを受けたと話しているがそういう次元は超えていた。

    「鷲獅子戦にはフレンも出撃してもらう」

     やたら大きな紙を持ったベレトが箱を乗せた教壇でそう告げると教室は歓声に包まれた。これで別働隊にも回復役をつけられることになる。治療の手間を気にせず攻撃に回せるのは本当にありがたい。今まで金鹿の学級には回復役がマリアンヌしかいなかった。負担が減ったマリアンヌの様子をクロードが横目で伺うと後れ毛を必死で編み目に押し込んでいる。安心した拍子に髪の毛を思いっきり掻き上げて編み込みを崩してしまったらしい。彼女もまたクロードと同じく秘密を抱える者だ。二重の意味で仲間が増えたことになる。五年前のクロードは周りの学生に興味は持たず大きな謎だけに目を向けていたからマリアンヌのことも流していた。どこに世界の謎を解く手がかりがあるか分かりはしないのに勿体ない。
    2086