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    クロロレ。ェュ前提なのでご注意下さい。紅花ルート

    有情たちの夜.14「枠の外へ2_5」 資格のないものが英雄の遺産に触れると何が起きるのか、ヒューベルトもフェルディナントも目撃している。そしてレアは破裂の槍を手中に収めようとしていた。今思えばベレスはあの時から中央教会に対して不信感を覚えていたのかもしれない。シルヴァンに直接、破裂の槍を返却していた。タルティーンではそのせいでヒューベルトたちは苦労することになる。
     だからこそ自分もフェルディナントもローレンツの言うことが俄かには信じがたかった。英雄の遺産は禍々しい面もあるが使用者の力を千人力にする。悪用を恐れて弱体化させておくなど考えられない。
    「クロードは英雄の遺産に興味を持っていたが、機序が理解出来ないものを切り札にするつもりはなかったのだ」
     先ほど感情を露わにしたことを恥じているのか、ローレンツは淡々と事実を指摘した。クロードの出自を知った今となっては何の不思議もない。デアドラに現れたパルミラ兵こそがクロードの切り札だった。
     パルミラ育ちの彼にとってフェイルノートはよく命中し、紋章を持つ射手の体力を回復し続ける弓でしかない。全てを託すつもりはない上に悪用される危険がある、となったら躊躇する理由はないだろう。
    「ああ、だから猜疑心の塊を自称していたのだな!」
     そこは感心するところではない。フェルディナントが開いた唇に手を添えた。彼の発想はいつも些か突飛でヒューベルトの調子を狂わせる。弁護人が必要、と言うのもフェルディナントの発想でローレンツの要望ではない。
    「貴殿が少しは持つべきものですな。そしてクロード殿はもしかしたら……」
     フォドラの良き貴族として育てられたフェルディナントとローレンツからしてみれば正気の沙汰ではない。現に大司教を守る剣、と称していたカトリーヌは戦場で常に雷霆を手にしていた。お尋ね者となった〝カサンドラ〟が新しい名とセイロス騎士団での職位を与えられたのは雷霆という手土産があったからかもしれない。今となっては真実を確かめる術は残っていないが、大司教レアの英雄の遺産に対する執着は常軌を逸していた。



     ヒューベルトとフェルディナントはそれぞれ別の事象について勝手に納得している。しかしローレンツはこれまでと同じく、胸の内に溢れる納得のいかないこと、を理性でねじ伏せていた。惨めさに騒つく心を飼い慣らさねば門地も領地も危険に晒してしまう。
     対外的には戦闘中行方不明ということになっているが、国外追放に至るクロードの奮戦ぶりはフェルディナントから聞いている。民に頭を下げて避難させ、軍港に罠を張った。エーデルガルトとベレスでなければ彼の罠を食い破ることは不可能だっただろう。死地において、クロードはフェイルノートにもローレンツにも頼らなかった。賭けに負けた彼は今どこにいるのだろう。
     ローレンツはフェルディナントが淹れてくれた紅茶に口をつけた。この茶器はこの館に元からあったものではない。白地に紺の模様が入った帝国風のものだ。そんな些細な事柄がデアドラで円卓会議が開かれる日は二度と来ない、という事実をローレンツに突きつけてくる。
    「信じがたい愚行だ……では代わりに紛いものが嵌まっていたのか?」
     武具に詳しいフェルディナントがかいつまんで説明してくれた。不具合を発見したのは女帝エーデルガルトの伯父、アランデル公らしい。彼も何某かの紋章を持っているのだろう。
    「動作確認をした際にその紛いものが割れたので驚愕したそうだよ。破片を調べたところどうやら人造の紋章石が嵌まっていたらしい」
    「因みにフライクーゲルに異常はありませんでした」
     ヒューベルトの声に微かな苛立ちが混ざっている。視線の先にはフェルディナントが淹れたテフがあった。茶菓は人間に余裕をもたらしてくれる。
     帝国が豊かと言えども、あれほどの大乱の戦費が全て開戦前に用立てられるはずがない。しかも戦災で壊滅的な被害を受けたデアドラ港やフェルディアを再興する羽目になっている。この状況ではパルミラとの国境警備はゴネリル家に外注せざるを得ない。クロードはフライクーゲル返還に至る事情まで読んだ上で、フェイルノートだけ無力化したことになる。
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    MAIKING「説明できない」
    赤クロと青ロレの話です。
    5.初戦・上
     三学級対抗の模擬戦はクロード達の勝利に終わった。これもクロードの記憶とは異なっている。容赦のなかったベレスの記憶があるクロードは事前に何か工作するかベレトに探りを入れてみたが拒否された。こんな下らないことに全力を尽くすなという意味なのか気高い倫理観の持ち主なのかはまだクロードには分からない。腹下しの薬は冗談だったが賛同してもらえたら武器庫に忍び込んで他学級の使う武器の持ち手にひびを入れてしまうつもりだった。

     母国やデアドラと比べるとガルグ=マクは肌寒い。気に食わない異母兄が王宮で働く女官を寝室に引っ張り込むような寒さだ。それでも来たばかりの頃と比べればかなり暖かくなっている。過酷な太陽の光に慣れたクロードの目にも山の緑は目に眩しく映った。長時間、薄暗い書庫で本を物色していたからだろうか。廊下に差す光に緑の目を細めながら歩いていると大司教レアの補佐を務めるセテスに声をかけられた。クロードは規則違反に目を光らせている彼のことがあまり得意ではない。

    「ちょうど良かった。クロード、後でベレトと共にこちらに顔を出しなさい」
    「分かりました。セテスさんは先生が今どの辺りにいる 2100

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    MAIKING「説明できない」
    赤クロと青ロレの話です。
    9.典儀・上

     情報には出元と行き先がある。それを見極めずに判断を下すと間違いが起きる。前節、カトリーヌがロナート卿の所持品から見つけた大司教レアの暗殺計画に関する密書は様々な波紋を読んだ。真偽の程は定かではないが対応せねばならない。

     謁見の間に呼び出されたベレトから今節の課題を聞いたクロードは教会があの密書をどう判断したのか悟った。今回も彼の記憶と同じく何者かが教会を混乱させる為に作成した偽物であると判断したのだ。そうでなければ士官学校の学生に警備や見回りを担当させないだろう。だがクロードにとっては丁度良かった。賊の狙いが何処であるのか確かめる為という大義名分を得て修道院の敷地内を直接、自由に見て回れる。賊が聖廟の中で何かを探し、奪いに来たがそこでベレスが天帝の剣を手に取り賊を撃退したことをクロードは覚えているのだがだからといって日頃入れない聖廟を直接探る機会を逃したくはなかった。それにロナート卿の叛乱の時と同じくまたクロードたちが当事者になっている。詳しく調査しておいて損はないだろう。

     ガルグ=マクにはフォドラの外からやってきた住人がクロード以外にも存在する。自然と祖先を 2082

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    MAIKING「説明できない」
    赤クロ青ロレの話です。
    11.末路・上
     クロードは先日、あんなことをしでかしておきながら怯えさせてすまない、とローレンツから逆に謝られてしまった。あれから何度か時間をとって話し合いをしてみたが互いの知る未来にかなり大きな食い違いがあることが分かりその後はおかしな雰囲気にはなっていない。

     細かな違いはあれどクロードの祖父が体調を崩し盟主代理として円卓会議に出席すること、それとマイクランが破裂の槍を盗み出すことは共通していた。

    「俺はマイクランが討ち取られたという話しか知らない」

     クロードの知る過去でもローレンツの知る過去でも級長が不在の可能性があるなら、と言うことで金鹿の学級はコナン塔へ行かなかった。

    「そちらでも箝口令が敷かれていたのか」

     教会は何かを隠している、というのが元からのクロードの主張なので教会の態度に矛盾はない。ベレトから馬の面倒を見るように命じられた二人はそれぞれ別の馬に新しい水や飼い葉を与え体を拭き尻尾の毛に櫛をかけ絡まっている塵を取り除いてやっている。いななきや馬が立てる物音が話し声を隠してくれた。今後の展開が色々と気になるところだが今回も祖父ゴドフロアの具合が悪くなるなら 2156

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    MAIKING「説明できない」
    赤クロ青ロレの話です。
    13.誘拐・上

     フレンが行方不明になった。クロードとローレンツは誘拐犯がイエリッツァであること、彼が死神騎士でありエーデルガルトの手の者であることを既に知っている。ローレンツが知る過去ではディミトリたちがフレンを見つけクロードが知る過去ではベレスとカスパルがフレンを見つけている。

    「ではこの時点でベレト…失礼、言い慣れないもので。ベレス先生は現時点で既に教会に不信感を持ち敵対すると決めていた可能性もあるのか」

     ローレンツの知るベレトは教会と敵対せずディミトリに寄り添っていたらしい。記憶についての話を他の者に聞かれるわけにいかないので近頃のクロードはヒルダにからかわれる位ローレンツの部屋に入り浸っている。彼の部屋に行けばお茶と茶菓子が出るので夜ふかし前に行くと夜食がわりになってちょうど良かった。

    「そうでもなければあの状況で親の仇を守ろうとしないと思うんだよな」
    「だが今、僕たちの学校にいるのはベレト先生だ」

     ベレスは戴冠式に参加していたらしいのでそこで何かあった可能性もある。クロードはどうしてもかつての記憶に囚われてしまう。

    「大手を振って何かを調べる良い機会なのは確 2090

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    MAIKING「説明できない」
    赤クロ青ロレの話です。
    15.鷲獅子戦・上
     フレンが金鹿の学級に入った。クロードにとっては謎を探る機会が増えたことになる。彼女は教室の片隅に座ってにこにこと授業を聞いてはいるが盗賊と戦闘した際の身のこなしから察するに只者ではない。兄であるセテスから槍の手解きを受けたと話しているがそういう次元は超えていた。

    「鷲獅子戦にはフレンも出撃してもらう」

     やたら大きな紙を持ったベレトが箱を乗せた教壇でそう告げると教室は歓声に包まれた。これで別働隊にも回復役をつけられることになる。治療の手間を気にせず攻撃に回せるのは本当にありがたい。今まで金鹿の学級には回復役がマリアンヌしかいなかった。負担が減ったマリアンヌの様子をクロードが横目で伺うと後れ毛を必死で編み目に押し込んでいる。安心した拍子に髪の毛を思いっきり掻き上げて編み込みを崩してしまったらしい。彼女もまたクロードと同じく秘密を抱える者だ。二重の意味で仲間が増えたことになる。五年前のクロードは周りの学生に興味は持たず大きな謎だけに目を向けていたからマリアンヌのことも流していた。どこに世界の謎を解く手がかりがあるか分かりはしないのに勿体ない。
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