偽煙 コンビニで、ふと目に付いた懐かしいお菓子。若い組員から貰った駄菓子は、大人びたい年齢の子供に丁度良いデザインで、空良と一緒に大人の真似遊びをしながら食べた思い出の味。当時、下っ端だった組員も今は中堅。懐かしさに一箱手にすると、ジュースの代わりにレジへと向かった。
※※※
古い金属の階段を音を立てて登り、向かう部屋は奥から2番目。
「僕だ、空良。いるなら開けてくれないかい」
ドアベルを鳴らして声を掛けると、人の動く音の後に扉が開いた。
「調子はどうだい? 親友」
「何の用だ、天生目」
出迎えに挨拶を交わしながら、部屋へと入る。机の上に広がる雑誌から、読み物をしていたらしい。空良は連絡の無い突然の訪問に、少しばかり首を傾げていた。
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