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    N63937664

    メギド/クラウス×バフォメット、アンドレアルフス×マルコシアス、ベリアル×アイム
    食物語/龍×燕
    ゾンビランドサガ/幸太郎×さくら

    その他:気が向いた時に気が向いたものを気が向いただけ

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    玉麟と若♀

    #玉若♀
    #腰若♀

    ーーあなたは子猫みたいですね。
     なんて言いながら微笑んでマントを広げ、胸へと誘ってきたり、手を取って散策に連れて行ってくれたりしたものだから、彼は私のことも動物の類と同じ存在だと思い込んでいた。
     実際抱き寄せてくれた時の温もりは眠たくなるほど暖かいし、気持ちいいし、そのマントの中には鳥やリスもいて。
     彼が私に額をよせてきたその仕草も、寒英に額をむけて目を閉じる微笑みと全く同じだったから。

     ーーどうせ私は彼にとっては『子猫』なのだから、いいじゃないか。
     
     私は浮世離れしたふわふわとした彼をからかってやろうと決め、高い位置にある彼の顔を見上げた。

    「ねえ相遥。いつもみたいに考えてることの当てっこしない?」
    「ええ」

     彼はよく、私と額をくっつけて考えていることの当てっこをする。最初は顔が近くてドキドキしていたけれど、最近はーー彼にとってこんなこと、獣といつもやってる当たり前のことなのだとがっかりさせられてばかりだった。
     額を寄せても、吐息がかかる距離で見つめあっても、彼は穏やかに笑うばかりだから。

     今日の彼も無防備に笑みを浮かべ、少し背をかがめて私に額を寄せてくる。彼はとても大きくて、私は女子として普通の背丈で。隣に並んで座っていても、彼と顔の高さを合わせるには少し難儀なのだ。

     私は彼と額を合わせた。ふわ、と優しい匂いの髪のにおいがする。そのまま硬い頬骨に両手を寄せて、長い銀のまつ毛が降りた瞼を見つめた。
     ああ、なんて無防備なのだろう。
     いつものように額を寄せる振りをして、私は瞼に口付けた。
     ぴくり、と瞼を震わせ、彼は私の唇を受け止める。
     奪っちゃった。そんな愉快な気持ちを笑みにして、私はもう片方の瞼にも唇を寄せる。

    「……」

     彼はされるがままだった。
     きっとこれから、何をされたのか気づいて真っ赤になって慌ててくれるだろう。私はそんなふうに思ってた。
     不意打ちのキスくらいしなければ、彼は私のことを「子猫」以外の存在だと思ってくれないのだからーー

     そのとき。
     スッと、静かに相遥の目が開く。
     薄い色の瞳が、私をまっすぐ見据えていた。

    「…若様」

     低い声が、眼差しが、私を射抜く。
     彼は目を細めて笑った。

    「ーーッ」

     ゾクゾクと体に震えが走る。
     彼の微笑みも、私を抱き寄せた腕も柔らかくて優しい。けれどもう眠気なんて感じられない。

    「額はここですよ」
    「あ……」
    「悪戯な方ですね、若様は……驚きましたよ」
    「驚いたって顔、してないじゃない…」

     自分の口から出る声が怖気付いている。

    「じゃあどんな顔をしているように見えますか」
    「それ、は……」

     唇が触れ合うような距離で、彼は私に問いかける。
     冬の曇天色をした眼差しが私を射抜く。焼けるように胸が熱い。頬が火照る。雪みたいな指先で頬を撫でられて、彼の手のひらの熱が伝搬する。かれは私の髪を撫でて、そして頸を擽ってくる。

    「…相遥……」

     肩を包み込む手は優しいのに、彼は微笑んでいるのに。その眼差しはどこか獰猛な色をしていて、私は指先一つ動かせなくなる。何が起きているのか、何が起きるのか。わからない。
     気づけば顎に手を添えられていた。唇を親指でそっと撫でられる。びく、と震えても彼は止めずそのまま私を抱き寄せ、顔を傾けてーー

     ぎゅっと目を閉じる。
     そして10秒。
     私の唇には、何も触れなかった。

    「ふふ。そんな怖がらないで。冗談ですよ」

     恐る恐る目をひらけば、そこには相遥の笑顔があった。彼は綻ぶ花のように笑い、私から体を離す。

    「すみません。若様が悪戯っ子でしたので、私もつい……悪戯をしてしまいたくなりました。……失礼します。また、会いに来ますね」

     彼は片手をあげて別れを告げ、笛の音と共に去っていった。

    「は……はは…」

     彼の姿が見えなくなってようやく、私はへなへなとしゃがみこんだ。足腰が震えて立ち上がれない。恐怖故じゃない。これは、きっと、驚きとか混乱とか……期待とか、そういうもので。

     とにかく。
     相遥を迂闊にからかうのはやめようと思った。
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    N63937664

    PROGRESS宴帰りの龍井が子推ちゃんを抱く話(健全なところまで)部屋に戻るといつものように子推燕が布団に丸まってベッドを温めていた。
     まるで越冬する渡鳥のように、冬になると子推燕は龍井のベッドに巣篭もりするようになる。それは空桑に住まいを移しても変わらない。
     そんな彼を観た空桑の食神代理は彼に専用の部屋を用意すると打診していたが、

    「龍井さんの部屋が温かいので結構です」

     と断っていた。若はそのあたりの機微に聡いので、それだけで子細理解したようだった。
     そもそも若は何も言わずとも龍井の部屋の入り口を広くして、特に窓の大きな部屋を用意してくれている。部屋も他の食魂より幾分か広い。特別扱いだ、と騒ぎ立てた輩も幾人かいたが、彼らが部屋に押しかけてきた折にたまたま広さの理由を示すことになって以降、表立って龍井に不満を漏らす者はいない。
     子推燕の持ち部屋はまさに『小屋』なのだから、足して割ればそう特別扱いというわけでもない。

     龍井は酒宴の余韻の残る正装の裾を捌き、ベッドでこんもりと盛り上がった塊へと近づく。
    「子推さん、帰りましたよ」
     ちら、と端をめくって声を掛ければ、子推燕は中から目だけを出してこちらを見やる。
     金色の双眸をいかにも、今 2675

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     そんな彼を観た空桑の食神代理は彼に専用の部屋を用意すると打診していたが、

    「龍井さんの部屋が温かいので結構です」

     と断っていた。若はそのあたりの機微に聡いので、それだけで子細理解したようだった。
     そもそも若は何も言わずとも龍井の部屋の入り口を広くして、特に窓の大きな部屋を用意してくれている。部屋も他の食魂より幾分か広い。特別扱いだ、と騒ぎ立てた輩も幾人かいたが、彼らが部屋に押しかけてきた折にたまたま広さの理由を示すことになって以降、表立って龍井に不満を漏らす者はいない。
     子推燕の持ち部屋はまさに『小屋』なのだから、足して割ればそう特別扱いというわけでもない。

     龍井は酒宴の余韻の残る正装の裾を捌き、ベッドでこんもりと盛り上がった塊へと近づく。
    「子推さん、帰りましたよ」
     ちら、と端をめくって声を掛ければ、子推燕は中から目だけを出してこちらを見やる。
     金色の双眸をいかにも、今 2675