飛行甲板で穏やかな日差しを受け、ゆるりと長い付き合いの僚艦たちに目を向ける。呉に来た20年と少し前、その頃の新人がすっかり中堅どころなんだから、自分も老けるはずだなとこの地で過ごした日々に思いを馳せる。
護衛艦として生まれ、後の半生を練習艦として過ごした34年のうち幾度となく纏った白い幕。第2の人生の方が長いとは生まれたときに想像も付かなかったが、お陰で海外の美しい景色も数多く目にしてきた。本体共々よく働いて、楽しく生きたと思う。懐かしい記憶を辿っていると、今年も一緒に行きたかったなという思いが募る。こうなることが決まってから気持ちの整理はしてきたつもりだったはずなのに。つい寂しさに苛まれ、少しだけ空を仰いだ。
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